中国・広州の現在の治安・安全対策ガイド〜危険な地区・エリア、トラブルと対策【2019年最新情報】
【中国・広州在住者執筆】中国の治安と聞かれて、日本より悪いのではないかと予想する人はいても、良いと思う人はなかなかいないのでしょうか。とりわけ広州の治安となると、情報も少ないゆえ、想像のつきにくいものかもしれません。ここでは在住者の立場から、実際の状況のレポート、およびトラブルの対処法をまとめました。
日本人にとって、中国の治安のイメージは如何でしょうか。正直あまり良くない方が多いのではないでしょうか。しかし今や中国は、アメリカに次ぐ経済大国となり、人々の暮らしが急激に豊かになっています。それに伴い物乞いやスリが減り、治安も目に見えて改善してきています。
ここ広州も、筆者が暮らす7年間のうちに、人々の暮らしに余裕が感じられるようになりました。また政府による市民へのセキュリティ対策に磨きがかかり、公共の場所での安全性がより強化された実感があります。ここが外国である以上、気を抜くことは出来ませんが、多くの日本人が思うほど危険な場所ではない、と言うのが正直な感想です。
今回は、そんな実体験を織り交ぜながら、広州市内の散策でやはり注意しておいた方が良い点をまとめました。特に女性は必見です。旅立つ前にトラブルの特徴や対策を把握して、現地では安全に楽しく過ごしてくださいね。
広州の現在の治安は?
外務省の海外安全情報によると、中国の治安は、内陸部の新疆ウイグル自治区、およびチベット自治区が「危険度1」(4段階評定の最低。十分注意してくださいレベル)に制定されている以外は、全て「危険度0」と評定されています。特に広州を含む中国東部・沿岸地域の治安情勢は比較的安定しており、一般的な注意をしていれば犯罪に巻き込まれる可能性は低いと考えられています。
ただし過信は禁物です。
広州滞在で我々が気を付けなければならないポイントを次にご紹介していきます。
治安が悪いエリアと注意点
広州市内で、取り分けて治安が悪いという地域はありません。
しかし郊外地域(白雲区など)は広州外からの出稼ぎ労働者が多く、移民街や貧困地帯も比較的多いので、殺伐とした雰囲気を持つ場所もあります。特に広州火車駅や広州市バスターミナル周辺などの人の出入りが激しいところ、また三元里の卸売市場周辺などは、ひったくりや恐喝事件なども発生していますので、十分に注意したほうが良いでしょう。
参考:外務省-海外安全ホームページ/海外安全虎の巻
外務省-海外安全ホームページ/海外安全劇場
外務省-海外安全ホームページ/海外邦人事件簿
スリ・置き引き対策
広州で最もスリが多いのは、地下鉄の中であると言われています。
スリから身を守るために必要な対策は、以下の通りです。
- バッグはファスナー付きのものにし、しっかりと閉じて前抱きにすること。
- 貴重品(財布・パスポート・携帯電話など)の携帯は最小限にし、肌身離さず持ち歩くこと。また、カバンやポーチにひとまとめにせず、分散させて持ち運ぶこと。
- 公共交通機関内で居眠りしないこと。常に警戒心を持つこと。
また、置き引きにも気を付けねばなりません。中国では中古携帯電話の流通が盛んですので、スマホの最新モデルなども盗難の標的となります。
- トイレなどで一時的に席を立つときは、荷物をすべて持ち運ぶか、信頼できる周りの人に見ていてもらうこと。
- ATMなどの操作時、カバンを足元に置きっぱなしにしないこと。
- レストランなどでテーブルの上に不用意に貴重品を置かないこと。
タクシーのトラブル対策
タクシーもトラブルの多い場所の一つです。
以前に比べると少なくなりましたが、わざとメーターを倒さず、目的地に着いたら高額請求してくるドライバーが、現在も一定数存在します。また夜間の女性の一人乗車では、人里離れた場所に連れて行かれ、乱暴されそうになったり、街に帰して欲しければ高額を支払うよう要求されたりと、過去には悪質な事件が多数発生しています。乗車時に少しでも不審な点があれば、すぐさま降車するよう心がけてください。
また、タクシー乗車時に発生しやすいのが、支払い時の偽札へのすり替えです。
ドライバーは客が支払った正規の紙幣をこっそり偽札にすり替え、「これは偽札だ」と言い張って客につき返してきます。車内は暗いので、多くの人がすり替えられたことに気付きません。殊に言葉の不自由な外国人であれば、わけも分からず偽札をつかまされてしまいがちです。こういったトラブルを未然に防ぐためにも、怪しい車両には乗らない、現金取引を極力控える、小額紙幣をたくさん用意して被害を最小限にする等の対策を講じましょう。
今はタクシーの配車アプリがあります。支払いも含めアプリ内で完結できるため、そちらを利用することをおすすめします。アプリの使い方は下記の関連記事を参照してください。
関連記事:『中国・広州のタクシーの乗り方ガイド(種類・料金・トラブル情報)』
広州滞在で注意したいこと
広州は中国国内において、治安が比較的安定している地域です。
しかしその時々の国際情勢や、国内の政治的な問題によって、ふいに外国人観光客もトラブルに巻き込まれる可能性があります。ここでは広州滞在中に気を付けておいた方が良いポイントを、二点に絞ってご紹介します。
対日感情に影響を及ぼす記念日
中国旅行で気になるのは、中国人の対日感情です。日中両国間で発生した歴史的・政治的な問題により、時として対日感情が悪化し、日本人や日系企業を狙った抗議行動や暴動につながる恐れがあるからです。
これは広州も例外ではありません。2012年に発生した尖閣諸島国有化問題では、広州でも1万人規模のデモが行われ、一部の暴徒たちが日本国総領事館へ侵入しようとして、周囲の建物や車を破壊したという事件が起きました。この騒動で日本人が直接暴行を受けたという報告はありませんでしたが、一時的に日本人お断りの店舗が増えたり、タクシーを乗車拒否されたりと、筆者もただならぬ雰囲気を肌で感じたものでした。
現在の日中関係は落ち着いていますが、いつ何どき同じような騒動が勃発するか分かりません。我々は平時においても不用意な発言は避け、節度ある行動をすべきです。特に日本に注目が集まりやすい歴史上の記念日等には、不要な外出を避け、細心の注意を払って過ごしましょう。
- 7月7日「盧溝橋事件発生の日」(七七事变/卢沟桥事变)
- 8月15日「終戦記念日」(日本二战战败日)
- 9月3日「抗日戦争勝利記念日」(中国人民抗日战争胜利纪念日)
- 9月18日「満州事変(柳条湖事件)勃発の日」(九一八事变)
- 12月13日「南京事件発生の日」(南京大屠杀死难者国家公祭日)
ただし必要以上に警戒したり、疑心暗鬼になるのも考えものです。
たとえ多くの中国人が反日感情を胸に秘めていたとしても、国家間の問題と、個人間の付き合いとは別物であると、割り切って考えている人はとても多いものです。それどころか、多くの広州人は日本人に対してとても親切で、温かく接してくれます。
どの国でも、問題行動を起こす人々はいます。でもそれは全体で見るとほんの一握りであり、その他大勢は話せばわかる常識人ばかりです。お互いに背負うものは色々あれど、節度ある気持ちの良い付き合いを通して、新たな絆を結べたら最高ですね。
過激派少数民族によるテロ行為
中国内陸の北西部に位置する新疆ウイグル自治区は、トルコ系の少数民族ウイグル族が多く住む地域です。イスラム教を信仰し、中央アジアや中東との結びつきも強いことから、漢民族との隔たりが大きいエリアの一つです。
同じく内陸の南西部に位置するチベット自治区は、少数民族チベット族が多く住む地域で、チベット仏教を信仰しています。ここもまた、人種や信仰、生活習慣の違いから、漢民族との隔たりの大きいエリアの一つです。
この二地域は、20世紀半ばに中国領土に組み込まれたばかりという、比較的新しいエリアであるため、少数民族の間では独立や自治獲得を望む声が多いことが特徴です。そのような背景から、近年中国政府への抗議行動の一環として、ウルムチ市内で無差別殺傷事件が発生したり、チベット族による焼身自殺が立て続けに起こったりと、治安情勢が不安定です。
広州にも多くの少数民族が移住してきています。とりわけ回族やウイグル族といったイスラム系が多く、越秀区の光塔路付近や小北地区は、ムスリムの密集居住地域となっています。彼らの多くは大変善良な市民であり、その地域の治安に問題があるわけではありませんが、何か政府との間に軋轢が生まれた際は、事件が発生しないとも限りません。不要なトラブルに巻き込まれないためにも、旅行者として最低限の知識は頭に入れておきましょう。
なお外務省では、ムスリムのラマダン月およびラマダン明けの祭り(イード)の時期に、世界中でテロ事件が発生しやすくなるとし、注意を呼び掛けています。最新情報の入手に努め、安全確保に十分注意を払うようにしてください。情報収集には「たびレジ」の利用が大変便利です。
参考:外務省-海外安全ホームページ/ラマダン月に伴う注意喚起
女性が気をつけたいトラブルと対策
中国に限らず、どこの国でも言えることですが、女性の一人歩きには十分注意してください。
特に夜間は、不審者が最も徘徊しやすくなる時間帯です。女性はできる限り一人で行動しないよう気をつけるのはもちろん、やむを得ない場合は、明るい道・人通りの多い道を歩く、暗い道・知らない道は歩かない、知らない人の声かけには乗らないなど、細心の注意を払いましょう。
また、自身が日本人であることを不用意に告げない工夫も必要です。告げないことによって、相手側の興味や関心を逸らすことができるためです。中国では日本人女性がとにかく人気です。とりわけ広州は、若い日本人女性が少ない地域ですので、いざ知られるとかなりの注目を浴びることになります。中国人男性は、日本人女性に対して可愛くて従順なイメージを持っているため、何とかしてお近づきになろうとしてくるのです。
全てが親切心からの声かけならばいいのですが、中にはレイプ目的の悪質なものもあります。ですから、こちらの情報を容易に開示しないことは、自己防衛の第一歩となります。知らない人から声を掛けられたら、中国語が分からないふりをしてやり過ごすか、毅然とした態度ではっきりと断る勇気が必要です。
参考:外務省-海外安全ホームページ/海外における女性の性的被害
トラブルがあった時の対処法
もしトラブルに遭ってしまったら、まずは事件が発生した場所の最寄りの警察署(公安局)へ行き被害届を出しましょう。大抵の場合、外国語が通じる警察官はいません。中国語が堪能な人について来てもらうと良いでしょう。
参考:广州市公安局
次に、最寄りの在外公館(広州では在広州日本国総領事館)へ行き、顛末を説明した後、どうすれば良いか助言を仰ぎましょう。在外公館は日本人を保護、援助することが任務です。緊急時には大変頼りになります。積極的に活用すると良いでしょう。
参考:外務省-海外安全ホームページ/大使館・総領事館ができること・できないこと
在広州日本国総領事館
パスポートのトラブルは日本領事館へ
パスポートの盗難・紛失の場合は、警察署(公安局)で盗難・紛失の届け出を行うとともに、イミグレーション(出入境管理处)へ行って、紛失証明(护照报失证明)を発行してもらわなければなりません。
その後、領事館へ行って「帰国のための渡航書」と呼ばれる簡易パスポートを発行してもらいます。その際、戸籍謄本等の書類が必要となるので、日本の家族の協力も必要となります。
これらが揃って漸く帰国が叶うので、最低でも一週間ほどの時間が掛かります。フライトの時間が迫っている場合は、早めに航空会社のカウンターへ行き、便を変更する手続きを取ることもお忘れなく!
その他の貴重品の盗難・紛失の場合、海外旅行保険に加入していれば、補償を受けることができる場合があります。その場合も保険申請に警察の被害届と控えが必要となってきます。
参考:在広州日本国総領事館-パスポート紛失の届出
广州市公安局-境外人员出入境业务网上智能咨询服务系统
現地での緊急連絡先(パトカー・救急車・消防車を呼ぶとき)
- 警察(公安局):110
- インターネット通報:网络违法犯罪举报网站
- 救急車(救护车):120
- 火災(火灾):119
- 在広州日本国総領事館:020-8334-3009(代表)〒510064 広州市環市東路368号花園大厦
まとめ
いかがでしたでしょうか?
広州は比較的治安が安定している都市ですが、どんなに旅慣れた人でも過信は禁物です。常に危機感を持ち、不用意な言動は避け、身の安全を第一に考えて行動してください。
その他、分からないこと、知りたいことがあれば、ロコタビの無料Q&Aで質問もできますのでぜひ利用してみてくださいね!皆様の愉快な旅路をお祈りいたします。