「１日の中に四季がある」といわれるように、イギリスは日内温度差が大きく、急な雨も頻繁に降るため体調管理が難しい国です。冬は日照時間が短く、どんよりな天気が続くので鬱になる人も多いそう。日々健康であることが一番ですが、異国の地での生活の中で不測の事態が起きることもあるかもしれません。そんな時に備えてロンドンで受けられる医療サービスと、特に日本人の強い味方となる日系の総合病院について詳しくご紹介します。

イギリスの医療事情

イギリスで提供されている医療サービスには国民保健サービスとプライベート医療サービスがありますが、どちらも先進国の医療水準を保っているため、安心して受診できます。

国民保健サービス

イギリスの国民保健サービスはNHS（National Health Service）といい、加入者は無料で医療を受診できます。風邪でも怪我でも入院、手術をしても無料、妊婦検診や出産費用も無料です。６か月以上英国に滞在する場合、外国人でも加入することができます。

NHSを利用するには？

NHSで医療を受けるには、まず家庭医（General Practitioner, GP）の診察を受ける必要があります。更に必要があれば、GPからの紹介を受けて専門医を受診できますが、自身で病院や医師を選ぶことはできません。
GPを受診するには、自宅近くのGP診療所に患者登録を行います。どこにはするかは自分で決められるので、近隣に住む人に評判の良いGPを教えてもらうと良いでしょう。登録方法はGPによって異なるため、確認が必要です。登録をしておかないと医療サービスは受けられないため、入国後はなるべく早く登録しましょう。
※下記サイトから近隣のGPを検索することもできます。

• NHS/GP検索ページ

注意点

誰でも無料で見てもらえるNHSは素晴らしいサービスですが、実情は無料なだけに、予約が取りづらかったり、待ち時間が非常に長いことで有名です。風邪などの場合は「予約が取れる頃には治っている」と言われているほど。子どもの場合はなんとかその日に診てもらえますが、熱や痛みの場合は薬局でパラセタモール（解熱鎮痛薬）を買うことをすすめられるだけで何もせずたいてい「大丈夫大丈夫」と言われます。
子どもの予防接種や妊婦検診なども無料で受けられるので、保険に加入できる場合は、プライベート病院とNHS両方をうまく利用することをおすすめします。

プライベート医療サービス

民間の医療機関では、治療費は全額自己負担となります。旅行者や短期滞在者は救急の場合を除いてNHSを利用することができないので、プライベートの医療機関を利用することになりますが、プライベート病院はかなり高額です。海外旅行保険や医療保険への加入を強くおすすめします。
プライベート医療機関を受診の際は、NHSとは異なりGPを通す必要はありません。直接病院に連絡を取って下さい。

ロンドンの日系病院

全科対応の日本人医師が家庭医（GP）として診察してくれるので、日本のかかりつけの内科に行くようなイメージで受診できます。
専門医による診察が必要な場合には、病院内もしくは外部の専門医を紹介してくれます。専門医は日本人ではなかったり、診察の曜日、時間が限られていることもあります。日系病院内で診察の場合は看護師が通訳をしてくれますが、外部機関で受診や検査をする際は日本人はいません。英語が得意でない方は通訳の手配などが必要になるかと思います。

ロンドン医療センター／London Iryo Centre

ロンドン北部にある日系の総合病院。24時間365日診療で、日本人医師、スタッフがサポートしてくれるので突然の病気や怪我の際も安心して受診できます。
ロンドン医療センターホームページ

ジャパングリーンメディカルセンター／Japan Green Medical Centre

ロンドン西部と中心部に２つのクリニックを持つ日系の医療機関。シティクリニックは仕事の前後に行くのにも便利です。日本人の産婦人科医師がいるので、「女性のかかりつけ医」としても頼りにできます。
グリーンメディカルホームページ

日本クラブメディカルクリニック（北診療所）／Nippon Club North Clinic

ロンドン屈指のプライベート総合病院内にて運営しているクリニック。東京慈恵会医科大学より派遣された日本人医師が診療してくれます。

日本クラブホームページ

救急医療が必要な場合

救急車を呼ぶには「９９９」に電話します。消防、警察も同じ番号なのでAmbulanceを依頼します。しかし、命に関わる症状でない場合はすぐに来てくれないことも多く、タクシーなどで救急病院に行った方が早いと言われています。
自力で病院に行ける場合はNHS病院の救急科（Accident & Emergency, A&E）を受診します。しかし、こちらでも命に関わらない場合はかなり待たされることがあります。
念のため事前に下記サイトから自宅近くのA&Eを確認しておくことをおすすめします。
NHS/A&Eページ

まとめ

無料だが必要最低限のことしかしてくれないNHSと、手厚く診てくれるが高額のプライベート病院、どちらを利用するかはご自身の選択になりますが、状況に応じてうまく使い分けると良いかと思います。日系病院の先生いわく、在住半年を経過したあたりから体調を崩す人が多いそう。慣れない土地での生活は色々と大変なこともありますが、ロンドンには日本人が多く住むエリアそれぞれに日系の総合病院があるという恵まれた環境にありますので安心して頼りましょう。