フランス・ニースの治安・安全対策ガイド~危険な地区・エリア、トラブルと対策
【フランス・ニース在住者執筆】ガイドブックで見る美しい海と街の写真では分からないニースの治安について解説! 治安の悪いエリアや安全対策、トラブル対処法、女性が気をつけたいトラブルなど、旅行中に注意したいポイントをまとめました。旅行前に一読してニースの街を安全に散策してくださいね。
ニースの現在の治安は?
2016年7月14日にプロムナード・デ・ザングレでフランス革命祭を祝う花火の見物客にトラックが突入するテロが起こりました。ニースでは警戒を強化し、市内各地に監視カメラを設置して警察官や兵士が昼夜市内をパトロールしたり、公共施設やカーニバルなどのイベント会場入口では荷物検査をしていますが、引き続き警戒が必要です。
テロのような突発的なケースを除けばニースは危険な街ではありませんが、観光客を狙ったスリなどの軽犯罪は日常茶飯事で、治安はよいとは言えません。昼間は女性が一人歩きしても大丈夫ですが、夜間は雰囲気が一変します。日本人を含むアジア人観光客は多額の現金を持ち歩く習慣と小柄な体格からターゲットとして狙われやすいです。
ニースを含むアルプ・マリティム県は、フランスの治安の悪い県ランキング第8位です(1位はパリ)。2018年に県内で発生した犯罪は人口1,083,268人に対して72,414件、そのうちスリ・ひったくりなどの盗難は18,543件、58人に1人の割合で盗難の被害にあっています。
ニースには移民が多く異なる文化背景の人々が生活しています。特に多いのはイタリア系とアラブ系(マグレブ諸国:モロッコ、チュニジア、アルジェリア)です。ニースを旅行する際は、フランス旅行時の安全対策に加えてイタリアとアラブ諸国旅行時の安全対策を知っておくとより効果的です。
外務省海外安全ホームページ・フランス安全対策基礎データ
外務省海外安全ホームページ・イタリア安全対策基礎データ
外務省海外安全ホームページ・モロッコ安全対策基礎データ
出発前に外務省の「たびレジ」に登録しておくと、旅行中も現地の最新情報を受け取れます。
ニースの治安の悪いエリアと注意点
治安の悪いエリア
ニース・ヴィル駅周辺
ニース・ヴィル駅周辺は移民や低所得者が多く治安がよくありません。2019年現在、駅周辺の再開発工事を行っていますが治安は相変わらずです。昼間は一部の通りを除けば危険ではありませんが、夜間はこのエリアには近づかない方が無難です。
ニース・ヴィル駅前から鉄道の高架下付近にかけては浮浪者や、アルコール・ドラッグ使用者のたまり場で、夏場はガラの悪い観光客もたむろします。
駅の北側、特にトラシェル通りとヴェルニエ通りは現地では悪名高いドラッグ・売春ストリートです。絶対に近づかないようにしてください。
駅の南側裏手のベルジック通りはアジトのようなシャッター街で、昼間でも通らないようにしてください。
駅の南側からクレマンソー通りにかけてはアラブ系の移民エリア、ジャン・メドゥサン通りの東側の線路からノートルダム通りにかけてはアフリカ系移民の多いエリアです。
駅周辺はドミトリーや格安ホテル、民泊・旅行者用アパートなどリーズナブルな宿泊施設の多いエリアですが、きれいな室内の写真を見て予約したら実際は低所得者の住む物件だったということもあります。筆者がニースで賃貸アパートを探した時に、どの不動産屋でも絶対に住んではいけないエリアと言われました。安全を重視して、割高でもこのエリアより南側や海に近いエリアに宿泊することをおすすめします。
夜間の旧市街
昼間は散策の楽しい旧市街ですが、夜間はバーやクラブなどナイトスポットが遅くまで営業し、酔っ払いやドラッグ使用者、浮浪者が多く、暗い裏道では乱闘、強盗やドラッグ取引もあり、特に0時以降は大変危険です。夜遊びの際には男性を含むグループで出かけ、人通りのある明るい道を通り0時までには引き上げましょう。
夜間の暗い広場や細い道
夜間に人通りがなくなる暗い広場や細い道は、ガラの悪い集団のたまり場やドラッグ取引場となったり強盗にあうおそれもあります。ニースエトワールショッピングセンターの裏の広場など、人通りの多い場所でもすぐ裏は危険です。昼間はにぎわうプロムナード・デュ・パイヨンの北側の道、マセナ高校から国立劇場付近は真っ暗で何が起こってもおかしくありません。遠回りでもジャン・メドゥサン通りや海沿いなど明るく人通りのある道を通るようにしてください。
ニース全域で注意したいこと
盗難(スリ、置き引き、ひったくり)
ニースでは観光客を狙った盗難が多発しています。
スリ対策として、服のポケットやリュックには貴重品を入れない、バッグやリュックは完全に閉めて体の前に来るように持ち、空港や駅、バス・トラム、電車、観光スポット、市場や店内、イベント会場、ストリートパフォーマーの周囲など、人の多い場所や注目して何かを見る時はファスナーを押さえて開けられないようにしてください。もし開けられてもすぐに取り出せない場所(ファスナー付きの隠しポケットなど)に貴重品を入れるとさらに安心です。スリはバス・トラム、電車の混んだ車内で荷物から貴重品を抜き取るだけでなく、グループでターゲットを囲み混んだ状態を作り出す、乗車時にターゲットを後ろから押してひるんだ隙に盗む、路上でぶつかって盗む、日本人同士で話している時や写真撮影に夢中になっている時を狙う、など手口はいろいろあります。スリはターゲットの後をつけて隙をうかがい犯行に及ぶので、常に「見られている」意識で荷物に手をかけ、周囲を見回して「見ている」アピールをすることです。
置き引き対策としてはカフェやレストラン、ホテルのロビー、ビーチなどで荷物を置いて離れない、荷物をいすの背もたれにかけたり床に置かない、スマホをテーブルに置きっぱなしにしないように。
ひったくり対策としてはリュックや斜め掛けバッグを使う、ひじ掛け持ちをしない、道を歩く時は道路側に荷物を持たない、バイクや自転車・スケートボード、音のしないキックボードに注意する、路上でスマホを使う際は立ち止まって壁際に寄り周囲に注意して使うようにしましょう。
持ち歩く現金は最小限に
盗難の多いフランスでは、多額の現金を持ち歩く習慣がなくカード払いが基本です。現金は盗まれたら終わりですが、クレジットカードやデビット機能付きの国際キャッシュカードなら利用停止できて補償もあります。またお釣りを間違えられることが多く、カード払いの方が確実です。ほとんどの場所で1ユーロからカードが使えるので、お財布に入れておく現金は公衆トイレやバス、市場、パン屋、チップなどで使う分、20ユーロ(約2500円、1ユーロ=約125円で計算)程度あれば十分です。日本と同じ感覚で一度に数万円相当の現金をキャッシングや両替すると後をつけられて危険です。キャッシングは外ではなく銀行やショッピングセンターなど屋内のATMを使い、周囲に注意して暗証番号入力時は手で隠し、明るい時間帯に済ませましょう。旅行中はパスケース兼小銭入れのような小型でできるだけチープなお財布の使用をおすすめします。現金やカードは分散させ、パスポートとは別にしておくと盗難にあっても被害が最小限に抑えられます。
夜間の外出
昼間は安全な場所でも夜は雰囲気が一変します。暗くて細い道は避けて、遠回りでも明るく人通りのある道を通るようにしてください。夏の間は夜遅くまで観光客が出歩いていますが、オフシーズンの夜間は閑散とします。
夏のバカンスシーズンにはガラの悪い観光客がハメを外しにやってきて、夜間にビーチや路上で音楽をかけて酒盛りやドラッグ、野宿をしたりします。怪しい集団には近づかないようにしましょう。
ホームレス、物乞い
温暖なニースにはホームレスや物乞いが多いです。危険なケースはまれですが、話しかけられても無視した方が無難です。
車上荒らし
レンタカーを利用する際は車上荒らしに注意してください。美術館などで観光を終えて車に戻ったら窓ガラスを割られて車内の荷物が盗まれていた、ということのないように、大きな荷物はホテルに置いて、車内には荷物を置かないことです。また信号待ち時の盗難に備えて、ドアは必ずロックして窓は全開にせず、荷物をドアの近くに置かないように。
交通マナー
一方通行の道路で歩道を逆走するなどバイクのマナーが最悪です。ひったくりにも注意してください。細い道路では高齢の観光客の運転する車が左右を確認せずに飛び出してくることが多く注意が必要です。
足元に注意
ニースの道は舗装がよくないだけでなく、犬のフン、ジェラート、割れた瓶、ゴミなどいろいろなものが落ちています。特に犬のフンは踏むと靴が汚れるだけでなく滑って転倒、大ケガにつながることもあるので足元をよく見て歩いてください。歩きスマホは論外です! また子どもやティーンが路上に爆竹を投げるいたずらにもご注意。
デモ
デモ隊に便乗して壊し屋が暴れることがあります。デモ隊には近づかないようにしてください。2018年末からのジレ・ジョーヌ(蛍光イエローのベスト)運動は沈静化していますが、週末などに時々有志が小規模なデモを行っています。
テロ
公共施設やカーニバル、クリスマスマーケットなどのイベント会場では入口で荷物検査を行っていますが、人の集まる場所では十分注意して異変を感じたらすぐにその場を離れて身の安全を確保してください。毎年5月から6月頃に行われるイスラム教徒の断食月(ラマダン)にはテロが増える傾向があります。国内外で事件が起こった直後は似た事件が起こる可能性があり特に警戒が必要です。
不審物
公共施設などに放置された荷物は不審物とみなされ警察や特殊部隊が出動します。放置された荷物を見つけたら絶対に近づかずにスタッフを呼びましょう。
女性が気をつけたいトラブルと対策
ナンパ
かなりの高齢者を含めて声をかけてくる男性はほとんどがナンパです。無視が一番ですが、しつこい時は毅然とした態度で断りましょう。
貴金属やブランド品は身につけない
男女問わず、お金を持っていると思われて不審者に狙われやすくなります。筆者の知り合いのフランス人女性はメッキの安いネックレスをつけていて夜道で強盗にあいました。ニースの潮風は貴金属にもよくありません。
娼婦と間違われないように
ビーチリゾートなので夏は肌を露出する人が多いですが、ミニスカートにハイヒールといったセクシーな服装でバッチリメイク(濃いめの口紅)をすると娼婦と間違われることがあります。なおアラブ系移民エリアでは肌の露出は避けてください。
夜間の外出
ニースは夜に女性が1人で歩く街ではありません。夜でも明るく人通りのあるジャン・メドゥサン通りや海沿いなどに近い宿泊施設を予約する、夜はロコに送迎してもらったりタクシーを利用するなどして安全に心がけてください。
ニースでトラブルにあった時の対処法
トラブルにあってしまったら警察に届け出ましょう。日時、場所、トラブルの内容や盗まれた金品、犯人を見た場合は犯人の特徴を聞かれます。また身の安全を第一に考えて、強盗にあったら抵抗せずに金品を渡す、バイクのひったくりでは荷物をあきらめて手を離した方が大ケガをせずに済みます。
パトカー・消防車・救急車を呼ぶ時
- 緊急時共通番号:112(警察・消防・救急の共通番号)
- 警察:17
- 消防・救急:18
- SAMU(有料の医師同乗救急車):15
112はEU内のどの国でも共通なので、ヨーロッパ旅行の際に覚えておくと便利です。
警察で盗難・紛失届証明書発行
貴重品や荷物の盗難・紛失の際は、国家警察(Police Nationale)の警察署で盗難・紛失届証明書を発行してもらいます。盗まれた金品が戻ってくることはほぼありませんが、保険の請求やパスポートの再発行に必要です。ニース中央警察署では日本語併記の盗難・紛失届作成依頼書を用意しており、必要な場合は通訳も呼んでもらえます。なお市警察(Police Municipale)では盗難・紛失届証明書の発行は行っていません。
ニース中央警察署(Commissariat Nice Central)
所在地:1 avenue du Marechal Foch, 06000 Nice
電話:04 92 17 22 22
窓口執務時間:8:00~21:00、緊急の場合は夜間も対応
パスポートのトラブルは日本領事館へ
ニースには日本領事館がなく、最寄りの在マルセイユ日本国総領事館に連絡を取りパスポートの再発給または帰国のための渡航書の発給手続をすることになります。警察発行の盗難・紛失届証明書が必要です。
在マルセイユ日本国総領事館(Consulat Général du Japon à Marseille)
所在地:70 avenue de Hambourg, 13008 Marseille
電話:04 91 16 81 81
FAX:04 91 72 55 46
開館時間:月~金 9:00~12:00、13:45~16:30
手続きに必要なもの:申請書(総領事館で記入)、警察発行の盗難・紛失届証明書、写真2枚、6か月以内に発行の戸籍謄本(抄本)
※早急に帰国する場合は帰国のための渡航書を申請、戸籍謄本(抄本)の代わりに運転免許証など日本国籍を証明できる書類でも可+帰りの航空券または航空券予約証明書が必要
クレジットカードの盗難・紛失時
すみやかにカード会社に連絡を取り、カードの利用停止手続をします。
カード会社 | 電話番号(24時間・日本語対応) |
---|---|
VISA | 08-00-919-552 |
MASTER | +1-636-722-7111 |
JCB | 00-800-0009-0009 |
AMEX | +81-3-3220-6100 |
DINERS | +81-3-6770-2796 |
三井住友VISA/MASTER | 00-800-1212-1212 |
DC | 00-800-3770-1818 |
UC | 00-800-8005-80055 |
シティバンク | +81-45-330-2890 |
まとめ
日本と同じ感覚で、バッグがひじ掛け持ちだったり体の後ろに回ったまま仲間との会話や風景に気を取られていると、スリやひったくりのターゲットにされてしまいます。荷物を意識して堂々と歩くだけでも不審者が近づいてくるのを防げます。せっかくの楽しい旅行が台無しにならないよう、安全に心がけて散策してくださいね。不安な場合はロコに案内してもらうのもよいでしょう。