【事例】ベトナムの文具ユーザー調査|店頭調査とインタビューを現地在住者に委託

【事例】ベトナムの文具ユーザー調査 店頭調査とインタビューを現地在住者に委託

コクヨ株式会社
https://www.kokuyo.com/

コクヨ株式会社の本社ビル

海外市場の規模や成長率は資料で分かります。しかし、売り場に何がどう並び、それが誰にどう使われているかは資料に出てきません。商品開発の方向性を決めるのは、後者のほうです。

コクヨ株式会社は、日本向けに設計した商品を海外へ展開する形から、日本・中国・ベトナムといった主要市場を最初から捉える商品企画へ切り替える過程で、この一次情報をどう取るかという課題に突き当たりました。調査会社への依頼は費用が高額になりがちで、結果が出るまでに時間がかかる。開発の初期段階で「まず現地の状況を把握したい」という目的には、必ずしも合いません。

そこでベトナム・ハノイ在住のロコに、文具売り場の店頭調査と学生へのユーザーインタビューを委託しました。第1段階として「7割方」の情報が取れたという評価に至るまでを、グローバルステーショナリー事業本部の木下郁さんに伺っています。

グローバルステーショナリー事業本部 木下郁さん

コクヨ|文具・ステーショナリー事業



ハノイの街並み

海外市場調査を調査会社に頼めなかった理由

― 海外向けの商品開発を進める中で、どのような課題意識がありましたか。

木下さん:海外向けの商品開発を進める中で、市場や顧客の情報をどのように取得するかという点は、以前から課題として認識していました。
これまでは、日本向けに設計した商品を海外で販売する、という形が中心でしたが、現在は日本だけでなく、中国やベトナムなども含めて調査を行い、最初からグローバルで販売することを前提とした商品企画を進める方向に変わってきています。
この変化に伴い、日本の開発メンバーが海外市場の情報をどのように把握するか、という点の重要性が高まってきました。 海外現地法人にも開発部隊はありますが、役割としては現地に特化したデザインや小回りの利く開発が中心です。
一方で、日本側では、複数の国や地域を横断して全体の共通性を見出し、チャレンジ性の高い商品を設計していく必要があります。そのため、日本側が主体的に市場や顧客の情報を把握しておくことが重要だと考えていました。

― その情報取得の手段として、既存の調査方法にはどのような課題がありましたか。

木下さん:調査会社に依頼する方法もありますが、費用が高額になりがちなことや、結果が出るまでに時間がかかる点がハードルでした。
開発の初期段階で「まずは現地の状況を把握したい」という目的には、必ずしも最適ではありません。 これまでは日本向けの商品をそのまま海外展開していましたが、「価格が合わない」「ニーズがずれている」といった事態が起こっていました。
そのため、各国のニーズを捉えた企画をするために、日本主導でクイックに現地の情報を直接取りに行く必要がありました。

― そうした状況の中で、ロコタビはどのような位置づけだったのでしょうか。

木下さん:市場や顧客の情報を、よりクイックに、必要な範囲で取得できる手段がないかを検討していました。
その中で、ロコタビのように、現地在住者を通じて情報を得られるサービスがあることを社内で知り、選択肢の一つとして認識するようになりました。
大規模な調査の代替というよりは、開発の初期段階において、現地の実態を把握するための手段として活用できるのではないかと考えました。
必要な情報を、必要なタイミングで取得できる点が、当時の課題感に合致していたと思います。

― 商品企画・開発の観点で、どのような情報が必要だと感じていましたか。

木下さん:商品企画を進めるうえでは、市場規模や成長率といった定量情報だけでなく、実際にどのような商品が、どのような売り場で販売され、どのように使われているのかといった情報が重要だと考えていました。特に海外市場では、日本で当たり前だと考えている前提が、そのまま当てはまらないケースが多くあります。
そのため、資料やレポートだけではなく、現地の実態に近い情報を把握する必要があると感じていました。一方で、初期段階から大規模な調査を行うことは現実的ではありません。開発の初期フェーズでは、「まずは現地の状況を把握する」「方向性を検討するための材料を得る」といった目的に対して、必要十分な情報を取得できることが重要だと考えていました。

― その「必要十分な情報」をどう捉えていましたか。

木下さん:完璧な答えを得るというよりも、判断の材料になる情報を揃えることが目的でした。
開発の初期段階では、方向性を大きく誤っていないかを確認できれば十分な場合もあります。
そのため、一次情報をどのような内容で、どの程度の深さまで取得するかという点が、商品企画・開発における重要な検討事項になっていました。


ハノイの線路沿いの街並み

ベトナムを調査対象に選んだ理由

― 調査対象として、ベトナムを選んだ理由を教えてください。

木下さん:アジアの学生ナンバーワンブランドを目指すという目標に対して、以前からコクヨの現地法人があるベトナムは、実態を追うべき優先順位が高かったといえます。

― 他国と比べた際の位置づけはどのように考えていましたか。

木下さん:これまでは日本向けに作った商品をそのまま中国やベトナムで販売していましたが、「価格が合わない」「ニーズがずれている」といった課題に直面していました。
そのため、今は特定の国にローカライズしすぎるのではなく、日本・中国・ベトナムといった主要な市場を並列に捉え、「全体の共通性」に対する企画を日本主導で進める方向に変わってきています。
その最初のステップとして、まずは現地の学生の生活や文具の使われ方の実態を正しく把握する必要があったのです。


ハノイでの店頭調査:売り場の写真と売れ筋商品の購入代行

― 今回のプロジェクトでは、ベトナム・ハノイ在住で現地のネットワークに精通するロコに依頼しました。最初に実施した店頭調査では、どのような点を重視しましたか。

木下さん:まずは、売り場全体の状況を把握することを重視しました。どのような商品が、どのような並びで、どの価格帯で販売され、どんな商品が人気なのかを、写真や実物を通じて確認したいと考えていました。
今回の調査では、ロコさんに文具売り場全体の写真撮影と、売れ筋商品の購入、日本への発送を依頼しました。人気の商品を実際に購入し、社内で確認することで、価格帯や品質感、パッケージの傾向などを具体的に把握することができました。

― 数字だけでは分からなかった点はありましたか。

木下さん:数字や資料だけでは把握しきれない部分が多くあったと感じています。
特に印象的だったのは、現地在住者であるロコさんだからこそ分かる、ベトナムの文化や生活習慣を踏まえた視点でした。
こちらが依頼した内容を単にこなすだけでなく、こちらの意図を汲み取ったうえで先回りして販売店舗の情報などを提供してくれたのが非常に参考になりました。
売り場の写真一つを取っても、どの商品が実際によく選ばれているのか、どのような人が買いに来ているのかといった背景を補足してもらえたことで、単なる価格や商品構成の確認にとどまらず、現地の生活や価値観を含めた市場の輪郭を捉えることができたと感じています。


学生へのユーザーインタビューで分かった文具の使われ方

― ユーザーインタビューでは、どのような点が印象に残りましたか。

木下さん:学生ユーザーへのインタビューを通じて、日本の学生と共通している点と、明確に異なる点の両方を確認することができました。たとえば、机の上のスペースが限られているという点は共通しており、その点から机上の文具の配置を工夫している様子が見られました。
一方で、そもそもペンケースを持っていない学生が一定数いることや、カバンに直接ペンを入れているケースがあることなど、日本とは異なる使われ方も確認できました。

― 海外での調査では予期せぬトラブルも多いかと思いますが、具体的なエピソードがあれば教えていただけますか?

木下さん:今回サポートしてくれたロコの存在は、本当に心強かったですね。例えば、インタビュー参加者の募集では、「海外事情あるあるで、無断キャンセルがすごく心配だから」と、現地の実情を踏まえたこんな提案をしてくれました。

  • 確保したい人数(5人)の倍である10人に声をかける
  • 1回のインタビューを2人1組で実施し、1人が来なくても中止にならないようにする

こうした現地ならではのリスクヘッジは、日本の感覚しかない私たちだけでは到底思いもよらないものでした。
依頼された作業をこなすだけでなく、目的を共有し、「調査を一緒に成功させよう」というパートナーシップを感じられたことが頼もしく印象に残っています。

― 商品企画への示唆はありましたか。

木下さん:日本の商品を見せた際の反応から、どの点が評価され、どの点が使いにくいと感じられているのかを把握することができました。
こうした声は、商品企画を進めるうえで非常に重要な情報です。
インタビューを通じて得られた情報をもとに、社内で具体的な議論を進めることができたと感じています。

― 今回の調査を進める中で、ロコタビの使い勝手についてどのように感じましたか。

木下さん:今回の調査では、最初に店頭調査と購入代行を行い、その後にユーザーインタビューを実施しました。
依頼内容としては、単純な作業ではなく、途中で調整や相談が必要になる場面も多かったと思います。
特に2回目のユーザーインタビューについては、学生を集める必要があり、実施方法についても事前に相談しながら進める必要がありました。
ロコの方には、こちらの意図や制約条件を伝えたうえで、どのような進め方が可能かを一緒に検討してもらいました。

― 現地ロコとのやり取りの中で、どのような点が印象に残っていますか。

木下さん:ロコさんはこちらの要望をそのまま実行するだけでなく、現地の状況を踏まえた提案があった点が印象的でした。
たとえば、学生の集め方についても、日本語教師の知人を通じた方法を提案してもらうなど、現地ならではのネットワークを活かした対応がありました。
また、無断キャンセルの可能性を踏まえ、余裕を持った人数設定や、2人1組でのインタビュー実施など、リスクを考慮した進め方についても提案がありました。
こうした点から、単なる作業委託ではなく、調査を一緒に進めている感覚がありました。


海外市場調査の費用とスピード:調査会社との違い

― 調査コストやスピードの面では、どのように評価していますか。

木下さん:調査会社に依頼する場合と比較すると、コスト面では大きな違いがあると感じました。
特に今回のように、開発の初期段階で方向性を検討するための調査では、必要以上に大きなコストをかけることは難しいという現実があります。
ロコタビを活用することで、必要な範囲に絞った調査を、比較的短期間で実施することができました。調査の設計から実施までのスピード感は、開発のテンポを落とさずに進めるうえで重要だったと感じています。

― スピードと質のバランスについてはどう感じましたか。

木下さん:短期間で実施したからといって、情報の質が大きく下がるという印象はありませんでした。
今回の調査は、第1段階としては「7割方」の情報を得ることができたと感じており、大きな収穫でした。
ベトナムの学生がどんな日常を送り、文具にどのような価値観を持っているかという「実態」をつかめたことは、開発にとって非常に重要でした。
今後はより深いターゲットへの調査など、次のステップを検討する土台ができました。


一次情報が社内の意思決定をどう動かしたか

― 調査結果は、社内でどのように活用されましたか。

木下さん:調査で得られた情報は、具体的な商品の「練り上げ」につなげるための材料として活用しました。
店頭調査の写真や購入した商品、ユーザーインタビューの内容を共有することで、関係者が同じ情報をもとに議論できる状態をつくることができたと感じています。
文章や数値だけで説明するよりも、実際の売り場や使われ方を視覚的に共有できたことで理解が速まり、認識のずれも生まれにくくなりました。

― 意思決定への影響はありましたか。

木下さん:「海外市場が分からないから判断できない」という状態から、「この情報を前提に検討を進めよう」という段階に進めた点は、大きな変化だったと思います。
一次情報があることで、議論が具体的になり、検討を前に進めやすくなったと感じています。

― 法人としてロコタビを利用してみて、どのような価値を感じましたか。

木下さん:ロコタビは、海外在住者を通じて情報を取得できる点が特徴ですが、法人利用の観点では、その柔軟性が大きな価値だと感じました。
依頼内容をカスタマイズでき、目的に応じた使い方ができる点は、開発部門にとって使いやすいと感じています。
また、社内で他の部門からロコタビの存在を知り、今回の利用につながったように、情報共有が進むことで、他の用途でも活用の余地があると感じました。

― 最後に、海外市場調査を検討している企業に向けてメッセージをお願いします。

木下さん:海外市場に関する情報は、調査の規模や方法によって得られる内容が異なります。重要なのは、目的に応じて適切な手段を選ぶことだと考えています。
開発の初期段階で、まず現地の状況を把握したい場合や、方向性を検討するための材料が必要な場合には、ロコタビのようなサービスは機動力があり、有効な選択肢の一つになると思います。
海外市場を前提とした検討を進めるうえで、一次情報をどう取得するかを考える際の参考になれば幸いです。

ペンケースを手にする木下郁さん

この事例のまとめ

  • 調査会社への依頼は費用が高額になりがちで、結果が出るまでに時間がかかる。開発の初期段階で方向性を確かめる目的には、必ずしも合わなかった
  • 店頭調査では、文具売り場全体の写真撮影と、売れ筋商品の購入・日本への発送をロコに依頼した。人気の商品を実際に購入して社内で確認することで、価格帯・品質感・パッケージの傾向を具体的に把握できた
  • 学生へのインタビューでは、机の上のスペースが限られている点は日本と共通で、一方でそもそもペンケースを持っていない学生が一定数いること、カバンに直接ペンを入れているケースがあることが分かった
  • 無断キャンセルを見込んで、確保したい5人の倍の10人に声をかける/1回のインタビューを2人1組で実施して1人が来なくても中止にならないようにする、というリスクヘッジは現地在住のロコから出た提案だった

【本プロジェクトの調査体制】
今回は、ベトナム・ハノイ在住で現地のネットワークに精通するロコに実務を依頼しました。 リアルタイムな現地情報の取得など、現地在住者ならではの機動力によって、精度の高い一次情報の収集を実現しています。

海外市場を前提とした商品開発や事業検討の初期フェーズにおいて、
現地の一次情報をスピーディに取得したい場合には、ロコタビが有効な選択肢となります。
ご関心のある企業様は、ぜひロコタビまでお問い合わせください。