【事例】遠隔サポートの新しい形でロコタビを活用。「進出しない」という決断こそが最大の成果。三浦水産が現地で感じた市場の飽和。

有限会社三浦水産
静岡県伊東市の魚市場の目の前に拠点を構え、創業30年以上の実績を持つ水産会社。 伊勢海老・アワビ・サザエなどの活魚卸売・小売に加え、特殊な冷凍技術「極冷」シリーズを展開。細胞を壊さず、獲れたての鮮度を再現する技術により、鮮度劣化が課題であった海外輸出において高い評価を得ている。過去にはシンガポールやアメリカへの輸出実績も持つ、地方発のグローバル企業。
今回ご紹介するのは、78歳になる会長の「シンガポールへ視察に行きたい」という一声から始まった、有限会社三浦水産のプロジェクトです。 現地の土地勘がない会長が、たった一人で現地へ渡り、市場のリアルを肌で感じる──。その想いを実現するために、日本にいる代表取締役の三浦大輔さんが選んだのは、民間の通訳業者ではなく、現地在住日本人(ロコ)による「生活者視点のアテンド」でした。
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突然の「行きたい」──高額な通訳費用と、既存サービスの限界
― 今回、ロコタビを利用されたきっかけについて教えてください。
三浦大輔さん(以下、三浦さん): きっかけは、弊社取締役会長(三浦静夫氏)の意向でした。 以前、静岡県の輸出振興団体を通じてシンガポールへ商品を輸出した経験があり、その時の繋がりや現地の様子を確認するために「挨拶回りと視察を兼ねて、行きたい」と言い出したのです。
― 78歳での単身渡航となると、安全面やコミュニケーションに多少の不安がありますね。
三浦さん: はい。当初はジェトロ(日本貿易振興機構)などの公的機関に同行を依頼できないか問い合わせましたが、個別の同行サービスは行っていないとのことでした。また、民間の通訳業者に見積もりを取ったところ、2日間で約30万円という提示を受けました。
― 2日間で30万円は、視察コストとしては大きな出費ですね。
三浦さん: 金額もさることながら、サービス内容のミスマッチも懸念材料でした。 今回の目的は、契約書を取り交わすような本格的な商談ではなく、「現地の空気感を知りたい」「市場を見たい」「かつての商品送付先に関係構築のために挨拶したい」という、視察に近いものでした。 ビジネス通訳のような形式ばったスタイルではなく、もっと柔軟で、要望に合わせて動いてくれるパートナーが必要でした。
そのような状況下で、会長自身がインターネットで「ロコタビ」を見つけてきました。コストを抑えられるだけでなく、現地在住の方ならではの柔軟な対応が期待できる点に魅力を感じ、利用を決めました。
元寿司職人のロコがアテンド──日本からの遠隔指示と現場の連携
― 実際の手配はどのように進められたのでしょうか。
三浦さん: ロコタビのサイト上でのやり取りやスケジュールの調整は、全て日本にいる私が担当しました。 何人かのロコの方を検討しましたが、最終的に依頼したのは、偶然にも現地で寿司職人をされていた経験があるロコさんでした。
― 水産業界の会長に対し、元寿司職人のロコとは、最適なマッチングでしたね。
三浦さん: はい、良かったです。水産や食の知識があるため業界の専門的な話も通じやすかったようです。 事前の打ち合わせでは、ロコの方からも「無理のないようゆったりした行程にしましょう」といった具体的な提案をいただきました。
― 具体的にはどのような場所を視察されたのですか。
三浦さん: 主に3つのポイントを回りました。 1つ目は、ジェトロ・シンガポール事務所への訪問です。事前に静岡のジェトロを通じてアポイントを取り、今後の展開に向けた挨拶と情報収集を行いました。 2つ目は、現地の日本食レストランや寿司店です。知人に紹介してもらったお寿司屋さんを訪れ、オーナーの方と現地の魚食事情について意見交換を行いました。 3つ目は、日系企業が出店している鮮魚コーナーや現地のスーパーマーケットの視察です。
ロコの方が、ホテルへの送迎からアポイント先への案内などのサポートをしてくれたおかげで、大きなトラブルもなく充実した視察になったようです。
「進出しない」という決断──現地で見たレッドオーシャン
― 今回の視察を通じて、ビジネス上の成果はありましたか。
三浦さん: 最大の成果は、「シンガポール市場には深入りしない」という明確な判断ができたことです。 日本でデータを見ているだけでは、「シンガポールは富裕層が多く、チャンスがある」と思いがちです。しかし、実際に現地を歩き、現地に長く住むロコの方の実感を聞き、スーパーの棚を見たことで、異なる現実が見えてきました。
― 具体的にどのような現実が見えたのでしょうか。
三浦さん: 市場の「狭さ」と「競争の激しさ」です。 シンガポールは国土が狭く、商圏が限られています。その市場に、すでに多くの日本の水産業者や商社が参入しており、飽和状態に近い状態です。日系スーパーの鮮魚コーナーを見ても、日本と変わらない品質のものが並んでいますが、競争率は高い状態です。 さらに、物価や家賃の高騰も顕著であり、今から単独で参入して戦うには、リスクとコストが見合わないと感じました。
― 行かなければ分からない「一次情報」だったわけですね。
三浦さん: そうですね。「ここは難しいのではないか」という現地のリアルな情報を持ち帰れたことで、会社として「次はシンガポールではなく、人口ボーナスのあるインドネシアなど、別の市場に目を向けよう」という前向きな方向転換ができました。 無駄な投資をする前に、正しい「判断」ができたことは、大きな成果だと考えています。
今後の活用法
― 今後の海外展開において、ロコタビをどのように活用していきたいですか。
三浦さん: 次に検討しているインドネシアなどの市場視察でも、ぜひ利用したいと考えています。 また、その他の国へのアプローチの際も、現地ビジネスに精通したロコの方を「窓口」やパートナーとして頼れるのではないかと感じています。
【協力企業】 有限会社三浦水産
公式ウェブサイトhttps://marukinmiura.com/
伊豆・伊東港の目の前で創業30余年。活魚の卸売・小売に加え、究極の冷凍技術「極冷」で、日本の魚食文化を世界へ発信している。
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