【事例】シンガポール国立大学を現地在住日本人と見学|高校の海外研修で生徒主体のキャンパスツアーを実現

シンガポール国立大学(NUS)の見学を、高校のIB Science Project (海外研修)の中で、少人数かつ生徒が主体となる形で実現した事例です。鳥取県立倉吉東高等学校は、国際バカロレア(IB)のディプロマプログラムを学ぶ2年生6名と教員2名によるシンガポール海外研修で、ロコタビを通じて現地在住の日本人ロコさんに先進的な理系人材を輩出しているシンガポール国立大学内の案内を依頼しました。学生寮や図書館を見学し、大学の食堂で昼食をとった3時間で、生徒さんたちは海外大学の学生生活を肌で感じる機会を得ました。
この事例の要点
- 課題:生徒が受け身にならない形で、海外の大学を実際に見る機会を海外研修に組み込みたいと考えていた。
- 取った手段:ロコタビで見つけたシンガポール在住のロコさんと日本語でやり取りを重ね、シンガポール国立大学の3時間の案内を依頼した。
- 見学後の変化:学生寮や図書館を見学し、大学の食堂で昼食をとる中で、将来につなげるために「今の学びをもっと頑張りたい」と感じた生徒さんがいた。
海外研修や視察で、現地の大学や施設を少人数で訪ねる段取りに不安はありませんか?
ロコタビでは、世界180カ国・2,500都市以上に住む日本人のロコさんに、現地での案内や事前の相談を日本語で依頼できます。
目次
国際バカロレア教育とシンガポール研修|交流校と海外大学を訪ねる
― 今回のシンガポール海外研修の概要と背景を教えてください。
浪花氏:本校は国際バカロレア(IB)のディプロマプログラムの認定校で、今回の海外研修に参加したのはその3期生です。本校は以前から海外研修を長く続けており、これまでは韓国や台湾などを訪れてきました。IB教育は世界中に認定校があり、シンガポールにも本校と交流のあるIBの認定校があります。そこで3期生は、その学校を訪問して一緒に学ぶ機会をつくりたいと考えました。また、シンガポールはイノベーション立国であり、その人材育成を担っている大学を視察することをとおして、文系や理系といった枠組みにとらわれず、社会で必要とされる人になるための大学での学びに触れる機会にしたいと考えました。
また、海外の大学に関心を持っている生徒もいますが、海外の大学を実際に見に行く機会はなかなかありません。海外研修の中でそうした機会をつくれればと考え、日程のうち1日を交流校の訪問に、翌日を大学の訪問にあてました。
交流校とは、新型コロナウイルスの流行前に、先方の生徒さんや先生方が鳥取までお越しくださったこともあり、オンラインも含めて交流を続けてきました。本校の生徒が対面で訪問するのは、今回が初めてです。
― 参加した生徒さんと、IBを学ぶ生徒さんの進路について教えてください。
浪花氏:参加したのは生徒6名と引率の教員2名、合計8名です。
IBを選択している生徒が、全員海外の大学を目指しているわけではありません。IBは世界標準の学びですので、その学びを経験したうえで国内の大学への進学を考えている生徒もいれば、海外の大学にも視野を向けている生徒もいます。私たちはIBを、海外進学のための教育とは捉えていません。
本校は県立の学校として、鳥取にいながら世界標準の学びにアクセスできる機会を提供したいと考えています。
現地ガイドの選び方|人柄と知識を確かめて決めた依頼先
― ロコタビを知ったきっかけと、依頼先を選んだ経緯を教えてください。
浪花氏:まず、今回の研修はパッケージ型の団体旅行にはしたくないと考えていました。生徒たちが「行きたいから行く」「知りたいから知りに行く」研修にするには、専門家や、現地のことを詳しく知っている人が必要です。誰に案内してもらうかによって、研修の中身は大きく変わります。
Googleで検索したところ、ロコタビのプラットフォームが見つかりました。レビューなどを見て候補を選び、実際にやり取りをする中で、お人柄や知識を確かめてから依頼を決めました。
― 団体旅行にしたくなかったのは、なぜでしょうか。
浪花氏:いちばんの理由は、生徒が研修を他人ごととして受け止めてしまうことを避けたかったからです。教員やガイドに言われたとおりに歩けばいい、受け身でついて行けばいい、という形ではなく、生徒が当事者意識を持って臨める研修にしたいと考えていました。ですので、すでにパッケージになっている旅行ではない形を選びました。
私自身もシンガポールを訪れるのは初めてで、一から立ち上げる研修でしたので、経験のある方にお願いしたいという気持ちはありました。そのうえで、生徒たちには、用意されたものに乗るのではなく、自分たちで作り上げる経験をしてほしいと考えていました。だからこそ、引率する私たち大人も、調べたりやり取りを重ねたりしながら、一緒に作ってくださる方を大事にしたいと考えました。
― 保護者や生徒さんには、ロコタビの利用をどのように伝えましたか。
浪花氏:保護者の皆さんにもロコタビのことをお話ししました。シンガポール国立大学の視察にこういう方をお願いすることをご説明し、ご理解をいただきました。
教育活動ですので、経費を抑えることを大切にしつつも、値段だけで選ぶものではありません。候補の選定や進め方は、その都度管理職と相談しながら慎重に進め、「こういうことをお願いできて、こういう経験をお持ちの方」と確かめたうえで、初めての試みとしてお願いすることにしました。
生徒とは、相談しながら準備を進めました。ロコさんとの交渉は私が担当しましたが、やりたいことや知りたいことは生徒が考えて提案し、当日の待ち合わせ場所までも自分たちの力でたどり着くように伝えていました。
出発前の安全情報|ヘイズへの具体的な備え
― 出発前に、ロコさんからはどのような連絡がありましたか。
浪花氏:特にありがたかったのは、現地のヘイズ(煙害)について事前に連絡をいただいたことです。外務省の「たびレジ」からもこのことに係る連絡は届いていましたが、ロコさんからは、N95のような高性能のマスクがあるとよいといった、より具体的な情報をいただくことができました。
学校行事として生徒を引率する以上、生徒の健康と安全を第一にしたいと考えています。その意味で、具体的な情報を事前にいただけたのは非常にありがたかったです。現地では、のどや鼻、目に少し違和感を訴える生徒もいましたが、事前に聞いていたので、生徒たちも状況を理解して落ち着いて対応することができました。
キャンパス案内の3つのポイント|学生寮・図書館・大学の食堂
― シンガポール国立大学のキャンパスは、実際に訪れてみていかがでしたか。
浪花氏:事前にGoogleマップで見ていた以上に広大な敷地で、建物もたくさんありました。私は歩いて移動すればよいと考えていましたが、実際には湿度も気温も高く、体力の面も考えると、ロコさんに教えていただいたとおりバスで移動するのが現実的でした。
― 「ポイントを押さえて案内していただいた」とレビューに書いていただきました。どのようなポイントでしたか。
浪花氏:事前にお伝えしていたポイントは、大きく3つあります。
1つ目は学生生活で、特に学生寮を見たいと考えていました。海外の大学に関心があっても、住めるかどうか、食事はどうかといった点は、保護者も含めて気になるところです。
2つ目は大学の施設です。中に入るのが難しい施設があることは承知していましたが、規模感や日本の大学との違いを感じられるよう、図書館などを案内していただきました。
3つ目は、大学の中で食事をとることです。理由は2つあります。1つは、旅行中に安心して食事ができる場所を確保することです。初めてシンガポールを訪れるにあたって保護者会を開いた際も、保護者の関心ごとの一つが食事でした。大学の中であれば衛生面を含めた安心感がありますし、食事をきちんと確保することは、生徒の健康にも保護者の安心にもつながります。もう1つは、大学に入ったら何を食べるのか、いくらくらい費用がかかるのかを、生徒に肌で感じてほしかったからです。
見学の終わりに食堂へ案内していただくまで、時間配分も完璧で、生徒たちは十分に楽しむことができました。
― 研修を通じて、生徒さんたちにはどのような変化がありましたか。
浪花氏:前日に訪問した交流校では、生徒たちはとても楽しんでいました。同時に、「もっと語学力をつけていれば、もっと楽しめたのに」と感じたようです。誰かに「もっと勉強しなさい」と言われるのではなく、自分たちが肌で感じて学びを振り返り、「こうなりたい」と思えたことは、教室では得られない経験でした。
シンガポール国立大学では、まず「広い」というのが第一声でした。ロコさんと別れたあとは大学付属の博物館にも行きましたが、行き方を丁寧に教えていただいたので、迷うことなく到着できました。
学生寮の雰囲気や学生生活、図書館での学び、大学生がどのように一日を過ごしているかを知って、生徒たちはとても元気づけられたようです。こうした環境をもっと見てみたいと思った生徒もいれば、今の学びをもっと頑張りたいと思った生徒もいました。
今後の海外研修に向けて|日本語で事前に相談できる安心感
― 同じように海外研修を考えている学校の担当者様へ、メッセージをお願いします。
浪花氏:旅行会社を否定するつもりは全くありません。そのうえで、どのような方に教育活動を支えていただくにしても、安全や安心を第一にしながらも、大人も生徒もワクワク感を持って臨めることが、とても大事だと考えています。みんなが一斉に同じことをする時代から、多様性や一人ひとりの判断、主体的な学びが大切にされる時代になりました。ワクワク感があってこそ、主体的に学べるのだと思います。また、変化の大きい時代で新しいサービスが始まっています。どのようにしたら安心して利用できるのかを考え、サービスの利用の選択を含めて生徒が経験することも必要なことであると思います。
私たちの事例が、すべての学校に当てはまるとは限りません。ただ、少人数での研修や初めて訪れる場所で、経費を抑えつつ安心して利用したいという場合には、日本語のサイトで、日本語でやり取りができ、事前にいろいろな相談ができるロコタビのプラットフォームは、とてもありがたい存在でした。生徒の安全安心が前提の行事ですので、サービスの締結をする前に色々と相談することを通して依頼内容をすり合わせ、依頼者が求めることをロコさんが提供できるのかやお人柄を、しっかり判断することが重要だと思います。
シンガポール国立大学の見学|この事例からわかる3つのポイント
- 見学で確かめたいことを先に決める:倉吉東高校は、学生寮、図書館などの施設、大学の食堂での昼食の3点を事前にロコさんへ伝え、3時間の中で時間配分を組んでもらいました。教室では得られない海外大学の学生生活を、生徒さんが肌で感じる機会になりました。
- ガイドはレビューとやり取りで「人」を見て選ぶ:浪花さんは、誰に案内してもらうかで研修の中身が大きく変わると考え、レビューと事前のやり取りを通じて人柄と知識を確かめてから依頼しました。出発前には、ヘイズへの備えといった現地に住む人ならではの具体的な情報も届きました。
- 段取りの一部を生徒さんに任せる:ロコさんとの交渉は教員が受け持ち、知りたいことの洗い出しや当日の移動手段の調査は生徒さんが担いました。パッケージツアーではなく、生徒さんが研修を自分ごととして作る形にしています。
【ご協力校】鳥取県立倉吉東高等学校
鳥取県倉吉市にある県立高校で、1909年(明治42年)に旧鳥取県立倉吉中学校として創立されました。2022年に国際バカロレア(IB)のディプロマ・プログラム認定校となり、IB教育の理念を生かした教育活動を全校で展開しています。世界に通用する論理的思考力や表現力、コミュニケーション能力を身に付け、未来をリードするグローバル人材の育成を目指しています。
▶ 公式サイト:https://www.torikyo.ed.jp/kurae-h/
▶ 国際バカロレア(IB)サイト:https://kurae-h.jp/