フランスは医療先進国で日本と同水準の医療を受けられますが、医療システムが日本とは違います。医療機関受診前に知っておきたいフランスの医療システムとニースの代表的な総合病院、緊急時のサービスをご紹介します。
ニースには日本語対応の医療機関はありませんが、リゾート地で外国人も多く、ほとんどの医療機関で簡単な英語が通じます。総合病院は英語とイタリア語にも対応しています。

フランスの医療システム

医療保険

フランスの社会保障(Sécurité sociale:セキュリテ・ソシアル)は年金などを含む社会保障全般を指し、そのうちの医療保険(Assurance maladie:アシュランス・マラディ)に加入して保険証(Carte Vitale:カルト・ヴィタル)を取得します。医療機関受診時に保険証を提示して診療費を一旦全額支払い、後日一部の還付を受けます。日本のように初めから一部の負担で済む医療機関が増えてきています。
また民間の任意共済保険(Mutuelle:ミュチュエル)に加入すると医療保険でカバーされない自己負担分の一部の還付を受けられます。
フランスは国民皆保険制で、外国人でも正規に3か月以上滞在する場合は医療保険と任意共済保険に加入できます。

もちろん日本の海外旅行傷害保険も受診時に利用できます。保険適用の範囲など詳細は保険会社にご確認ください。

かかりつけ医

フランスではかかりつけ医(médecin traitant:メドゥサン・トレタン)の制度が採られており、総合病院を直接受診するのは緊急時や重症のケースに限られます。かかりつけ医が必要と判断した場合に総合病院や専門医を紹介してもらうシステムで、緊急でなければ通常はかかりつけ医の診療所(cabinet médical:キャビネ・メディカル)を予約・受診して処方箋をもらい、薬局(pharmacie:ファルマシー)で薬を購入します。かかりつけ医は、近所の一般内科開業医(médecin généraliste:メドゥサン・ジェネラリスト)を登録するのが普通です。かかりつけ医を登録していなかったり、かかりつけ医を通さずに総合病院や専門医を受診すると、医療保険の診療費還付率が低くなります。歯科は例外で初めから専門医を受診します。
日本の海外旅行傷害保険ではかかりつけ医の登録は必要ありませんが、かかりつけ医を決めておくと安心です。

総合病院

総合病院には、公立病院(hôpital:オピタル)と私立病院(clinique:クリニック)があります。緊急時以外は予約制で、かかりつけ医の紹介で予約します。予約は数か月先になることもあり、公立病院より私立病院の方が診療費は割高ですが予約が取りやすいです。
緊急で総合病院を受診する際は、電話や受付窓口で救急(urgences:ユルジャンス)希望と伝えます。かかりつけ医に連絡を取る余裕があれば、かかりつけ医から総合病院に救急の予約を入れてもらうとスムーズです。総合病院では緊急度の高い患者から優先的に診療しますので、直接来院しても余程の重症でなければ長時間待つことになります。

ニースの総合病院

ニース大学病院センター(CHU de Nice)

ニース大学病院センター(CHU de Nice:Centre Hospitalier Universitaire)は、県内最大規模の公立総合病院です。フランスでは私立大学の医学部は稀で、ほぼ全ての大学病院は公立です。
診療科目によって分かれている市内8施設のうち、主な4つの施設をご紹介します。
受診の際は、パスポート、滞在許可証(お持ちの方)、住居証明(電気代の請求書などフランスの住所がわかるもの、ホームステイなどの場合は家主の一筆)、フランスの保険証または日本の海外旅行傷害保険証が必要です。

ニース大学パストゥール病院(Hôpital Pasteur)

救命救急、内科、外科、循環器科、神経科など、最多の診療科目を網羅しています。

ニース大学レンヴァル小児病院(ESPIC Hôpitaux pédiatriques de Nice CHU-Lenval)

救急小児科、一般小児科専門の病院です。

ニース大学ラルシェ病院(Hôpital L’Archet)

産婦人科、新生児科などに特化した病院です。

ニース大学サン・ロック病院(Hôpital Saint-Roch)

救急歯科・口腔外科専門です。予約なしで診療してもらえますが、設備が古めで複雑な処置ができない場合は応急処置となります。

私立病院

サン・ジョルジュ病院(Polyclinique Saint George)

救命救急をはじめ多くの診療科目を網羅した大規模な私立総合病院です。

サン・タントワーヌ病院(Clinique Saint Antoine)

サン・ジョルジュ病院と同じ医療法人の私立総合病院です。救急対応していません。

ニースの緊急医療サービス

緊急時のための24時間体制のサービスです。

SAMU(サミュ)緊急医療救急サービス

医師が救急車に同乗していち早く医療行為を行います。ニースのSAMUは、ニース大学パストゥール病院内の一機関です。なお、フランスの救急車は有料です。

救急・消防(Sapeurs-Pompiers:サプール・ポンピエ)

フランスの消防士は救命救急士も兼ねています。日本の救急車の感覚に近いのはこちらです。

SOSドクター(SOS Médecins:SOSメドゥサン)

緊急時や夜間・休日に、自宅に医師を派遣してもらえます。

まとめ

現地の医療事情を知っておけば、いざという時に適切な対応ができます。この記事の存在を覚えておいて、必要な時に活用していただければ幸いです。
ニースでは、夏場は日よけと水分補給を心がけて熱中症にご注意ください。冬でも晴天の日が多く比較的温暖ですが、日なたと日陰、朝晩と昼間の気温差で風邪を引きやすいので気をつけてください。
健康に留意して、楽しく充実した滞在生活を送りましょう。