トイレ難民にはなりたくない!土地勘が物言う切実なタイのトイレ事情

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※本記事は特集『海外のトイレ』、タイからお送りします。

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肝心なときに見つからないタイのトイレ

外国で暮らしていると、日本にいたときには気がつかなかった、日本のいいところがふとしたところから垣間見えるときがある。ボクにとってのそれはトイレだ。日本のトイレは清潔で安心して使えるところが多い。

ボクが見てきた限り、東南アジアはどこもトイレが汚い。シンガポールはきれいなところが多いが、ほかはとにかく臭くて不潔。日本のトイレが異常なレベルであると感じるほどだ。経済的に発展しているタイでも、多くのトイレがひどい状態である。しかも、肝心なときにトイレがみつからないこともよくある

タイのガソリンスタンドの男子トイレはなぜか小屋の裏手の外にある。

日本の大都市なら、緊急時のトイレといえば駅やコンビニのトイレが思い浮かぶところだ、タイは駅にもコンビニにもトイレがない。実際には従業員用のトイレは存在するのだが、どんな状況であろうとも関係者以外は絶対に入れてくれない。

そのため、タイ在住日本人は行動範囲の中において、どこにトイレがあり、緊急事態にはどこに行くべきかを把握している人が少なくない。困ったときに駆け込める場所をしっかりと憶えているのだ。

とはいえ、それはそんなに難しい話ではない。要は商業施設かホテルの場所を憶えておくといいのだ。バンコクの中心を走る高架電車のBTSなら、主要な駅にはデパートやホテルが隣接されている。最近は駅から直結の連絡橋を設けていることも多くなったので、より行きやすくなった。

伊勢丹向かいのスーパーまでBTSの連絡橋が架かっている。

日本人居住者が多いスクムビット通りエリアだと代表例は、BTSプロンポン駅と直結するエンポリアムデパートだ。向かいにはエムクオーティエという同系列デパートがあるが、距離を考えるとエンポリアムの方が確実である。

BTSアソーク駅もターミナル21という商業施設が直結している。ただ、注意したいのは、ここは利用客が多く連絡橋直結フロアが混雑しやすい。そのため、階下に降りるか上に上がるか、あるいは建物の奥にあるトイレへ向かった方が空いている確率が高いのだ。

このようにある程度、行動範囲にどんな商業施設やホテルがあって、どこが部外者にもトイレを開放しているか、建物内でトレイの位置はどこかなどを把握しておくとタイ(とくにバンコク)生活における安心感が違う。

 

タイのトイレは有料であるほど汚い?

都心の駅などを除き日本ではほとんど見かけないトイレ文化に「有料トイレ」というものがある。利用料はだいたい2~5バーツくらいが相場で、日本円で7~18円くらいといったところ。さすがに5バーツくらいになると高いと思うけれども。

ガソリンスタンドのトイレは基本無料ばかりで使い勝手がよい。

有料トイレは前払い制で、場所によっては回転扉のような物々しいゲートを用意していることもある。これが意外に困る。急ぎのときにわざわざ小銭を財布やポケットから出す手間が惜しいのだ。

ただ、テーブルを入り口に置いているだけの緩い有料トイレも少なくない。この場合は出るときに払うということも可能だ。絶対的前払い制のトイレと比較すると神のような優しさを感じてしまう。たかだかトイレなのに、だ。

以前はトイレが汚かった、人気商業施設MBK。

とはいえ、ボクは有料トイレが嫌いだ。必ずしもそうではないとはいえ、有料トイレは汚いことが多い。特に郊外などのタイ人向けの商業施設は、有料の場合だと多くが汚い。むしろ無料の方がきれいなくらいだ。有料だから掃除されると思って適当に使うのか、あるいは汚く使う人が多いから有料になったのか。

スーパーで見かけた「便座にしゃがまないで」のステッカー。

女性の方はわからないが、男子トイレはたとえば個室だと便座を上げないで小便をする人が多く、便座が汚れている。いくらなんでも座れないだろうというくらい汚れている。足跡がついていることも多々ある。

後述するが、タイの昔ながらのトイレは和式のようなタイプだ。今はだいぶ減ったが、20年くらい前なら洋式に座って用を足せない人がたくさんいた。それで便座にしゃがんでしまうようだ。今でもときどきトイレに注意書きが見られるので、少数派ながらいまだに座れない人がいるようである。

MBKは大幅な改装でトイレが快適になった。

バンコクにある観光客に人気の雑居型商業施設のMBKもかつては有料だった。そのときはとにかく汚かった。床は濡れているし、悪臭はするし。そのあと大々的に改装が行われ、それと同時にトイレが無料になった。普通に考えたら無料ならより汚くなりそうだが、MBKは逆にきれいになったのだ。

だから、タイのトイレは無料を狙って使うべきである

 

みんな間違っている?トイレのアレの使い方

タイのトイレが臭いのにはワケがある。それは、基本的には紙を流してはいけないからだ。現在はだいぶ品質が向上して、トイレットペーパーも水に溶けるようになったので問題ないはずなのだが、流すときの水量の問題なのか、便器横のゴミ箱に紙を捨てるよういまだ推奨されている。

今でこそほとんどの商業施設のトイレにトイレットペーパーが設置されているが、かつては有料のところに限った場合も少なくなかった。1バーツから10バーツくらいの値段で売り子か自動販売機で購入する。ただ、1バーツだと卓上に置いてあるようなただのティッシュペーパーが1枚だけなど、結構ハードなレベル設定になっていたものだ。

タイ式のしゃがみこみ便器。

有料であっても紙があるだけマシだ。稀に一切紙がないというところもあった。なぜなら、そもそもタイのトイレ作法において尻を拭くのに紙を使わなかったからだ。東南アジアやインド辺りでは水と左手を使うのである。最近のタイのガイドブックには書かれなくなっているが、20年くらい前までは「物の受け渡しなどで左手を使うのは失礼に当たる」というような注意書きがあったくらいなので、いかにその習慣が当たり前だったかが分かるだろう。

タイ式の便器は従来、日本の和式のような形をしている。ただし、金隠しがない。なぜならこのタイ式しゃがみ込み便器は使う向きが和式とは違って、水が溜まる穴に尻を向けるからだ。

水槽が右側にあるので、左手を使いやすいが、逆に設置されている残念なトイレもある。

タイ式のトイレには水洗のレバーがついていないときもある。そういったトイレは紙も置いておらず、一方で水槽が便器横に設置されている。この水を使い、タイ人は尻を洗うのだ。手桶に水をすくい、左手にかけるようにバウンドさせ、さらっと尻穴を洗っていく。これは東南アジアやインドではどこも似たようなやり方らしい。

洋式便器だと、横に水鉄砲のようなウォシュレットがついている場合が多い。これが使い慣れると便利なもので、在住日本人の中にも気に入っている人が結構な人数いると聞く。

水鉄砲型ウォシュレット。

ただ、使うときに要注意だ。痔になるのではないかというほど恐ろしい勢いで水が出る場合がある。だから、使う前には一度水勢の強弱を確認した方がいい。しかし、一方で異様なまでに弱いときもある。撃っても尻まで届かないほどに弱いことがあるのだ。

実はこれはタイ人でも勘違いしている人が多いのだが、この水鉄砲型ウォシュレットは直に尻に当てるのではなく、しゃがみ込み式便器の水槽から水をすくって洗うのと同じように、左手を濡らして(あるいは水をバウンドさせて)使うものだ。だから、水勢が弱くても本来は問題ない。とはいえ、近年の若い人は直接洗うことに抵抗があり、直接尻に水を当てているようだ。

 

個人的に苦手な「トイレ係」の作法

外国人向け施設の場合にはいないが、タイ人向けのナイトエンターテインメントスポットだと「トイレ係」が待機している。ボクはこれが嫌で仕方がない。

最近は郊外にタイ人向けのいい店が増えている。

というのは、男性の場合、小便は小便器前に立って用を足すわけだが、そのときにその係がうしろに立ち、肩や背中を揉んでくるのだ。暇な店だと外国人だからと数人が寄ってきて、右腕左腕、背中、腰、首とそれぞれひとりずつが揉んでくることだってある。

これは嫌がらせではなく、彼らにとってのサービスだ。実際にタイ人客を見ていると、特になんとも思わずにそのサービスを受けている。ボクなんかは混んでいるトイレでうしろに人がいるだけでも嫌なのに、さらに身体に触られると出すものも出てこない。これは多くの外国人が苦手と言うので、ボクだけの話ではない。

こういうときはボクは個室の方に向かい、鍵を閉めてゆっくりと用を足すようにしている。ただ、こういう係がいると、手を洗うときに蛇口をひねってくれ、温かいおしぼりを出してくれ、パウダーとか櫛とかいろいろあり、またこのときに肩もみをしてくれることもある。このタイミングなら大歓迎である。

バスターミナルのトイレも有料であることが多く、タイ式便器確率も高い。

トイレひとつ取っても、タイと日本ではこうも違うのだと思うと、これからはもっとよく観察をして考察してみたいとも思う。しかし、トイレに関しては日本の方が絶対にいいとも思うのである。

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この記事を書いた人

高田 胤臣

高田 胤臣

1977年、東京生まれ。1998年に初訪タイ、2002年からタイ在住。タイの救急救命慈善団体「華僑報徳善堂」唯一の日本人ボランティア隊員。現地採用社員としてバンコクで日系企業数社にて就業し、2011年からライターになる。単行本数冊、AmazonKindleにて電子書籍を多数発行。執筆のジャンルは子育てネタからビジネス関連まで多岐に渡る。最近は「バンコク心霊ライター」の肩書きがほしく、心霊スポットを求めタイを彷徨う。

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