タイは”女性の社会進出”トップクラス、逞しさを求められた女性たち。

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タイでは女性の管理職が当たり前

タイでは女性がよく働いている姿をあらゆる場所で見かける。街中の飲食店や商店の従業員は大半が女性だし、ボクが前職で電子部材専門商社の営業をしていたとき、製造業でも女性の社会進出を肌で感じた。日系企業でも購買部や製造ラインなど、あらゆる部署で女性が管理職に就いていることが多いからだ。

タイ南部の温泉地ラノーンのヨガ教室は講師も生徒も女性ばかり。

人口比で見ても、6600万人レベルのタイ人口のうち、女性の方が多い。内務省が発表している2015年の統計では男性が約3200万人に対し、女性が約3300万人だった。

同じ統計では年齢別にも人口比があり、たとえば20~59歳を抽出しても男性が約1890万人に対し、女性が約1957万人になる。一方で日本の総務省による統計では、2018年の数になるが、男性が約3142万人、女性が約3061万人だった。

これだけを見ると、タイは女性が多いから社会進出も多い、ということになるのだが、単純にそれだけなのだろうか。

タイの女性は勤勉で信頼されているともいわれる。それは日本人女性だって同じだ。ただ、あくまでボク個人の印象だが、日本で女性が部長クラスに就いていると、「がんばって昇進したんだな」と思ってしまう。一方で、タイも優秀でなければ上の地位には昇れないとはいえ、日本ほど「男だから」、「女だから」といった見方はなく、自然に昇進していった結果に見えるのだ。

この感覚の違いはどこから来るものなのだろうか。タイで見られる暮らしや社会から、具体的に考えていきたい。

 

案外知られていないタイ女性の社会進出

タイにおける女性の社会進出の割合が世界的に高いことは、案外知られていない。

調査元によって数値が違うものの、概ね、管理職に就く割合をポイント化したランキングでは、タイは確かに上位に入る。ところが、性別に関係なく、タイの会社員は待遇自体が全般的に世界と比較して低いので、社会保障や諸々を加えた総合得点では低くなってしまうことから、ランキングであまり目立ってこない。

機械電気関係の見本市「METALEX2019」の会場にも女性エンジニアの姿があった。

管理職に就く割合だけを見るなら、国際会計事務所「グラントソントン」の調査がネットで出てくるので、わかりやすい。この会計事務所が世界の企業トップ5520人を対象に実施した「国際ビジネス報告2016」(出典)という調査では、タイでは管理職に女性が占める割合が2015年時点で37%となり、世界第4位の結果になっている。調査対象国の平均が24%、ちなみに日本はわずか7%と最下位だった。

このように数値で見ても、タイ女性の社会進出は世界的に見ても多い。

 

背景にはそもそも“タイ人男性が働かない”という事情がある?

タイ女性の社会進出が多いのは、やむを得ない事情があってのことだともいわれる。というのは、東南アジアの多くの国では似た傾向が見られるが、全員ではないにしろ、“男性が働かないから”という理由が大きい。

田舎の子どもたちは無邪気に元気だが、この数年後には現実がのしかかってくる。

たとえば日本は四季があるので、今の季節に常に次の季節の準備が必要になる。つまり未来を見据えて働かねばならない。一方でタイなど熱帯気候に属する国は年がら年中暑い(標高の高い地域などは除くが)。極端な話、衣服ならTシャツ1枚あればずっと生きていけるし、高温多湿で雨もよく降るので農作物もなにかしら年中育てられる。

また、タイ人の約94%が仏教徒とされ、宗教的にも「徳を積む」ことが普通のこととなるため、隣人が困っていれば助けることも当たり前のことだ。

つまり、「働かなくたってその日の食事に困ることはない」となり、自然と楽観的になることがタイの国民性のひとつに数えられるのだ。

タイだけでなく東南アジアの女性はみんなたくましい。

しかし、女性はそうはいかない。子どもを産んで、乳を飲ませなければならないし、育ち盛りの子どもを食べさせ、学校に行かせなければならない。男性もそうであるべきだが、育児に参加しないいい加減な父親がいるのも現実だ。また、親世代を子が養う習慣がタイにはあるので、世帯によっては親の面倒も見る必要がある。

だから、女性は現実的に働かなければならないのだ。農村では畑を耕し、都市部では屋台などで働く。学歴があれば会社員にもなる。

しかし、全員ではないと書いた通り、「タイ人男性が働かない」というのはタイ社会を雑に観察した結論だとボクは思う。なぜなら、タイ企業などを見ると、勤続数十年という男性がどこにでもいるのだ。企業の管理職などの人が「タイ人男性は働かない」あるいは「扱いにくい」と言うのは、単にその管理職の管理能力の欠如だと思っている。

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タイ女性の社会進出は彼女たちが勝ち取ってきた道

タイに長く暮らす日本人に話を聞くと、1980年代は少なくとも日系企業に女性管理職はほとんどいなかったそうだ。そもそもタイで「会社で働く」というライフスタイルが定着したのはそれからで、当時は男性が圧倒的に多かったという。それが徐々に女性の中でも活躍する人が現れ、女性管理職が増えてきた。

シーロム通りソイ・コンベントの有名な麺食堂で腕を奮う女性店主。

その年代にボクはタイにいなかったので推測になるが、かつては屋台などで働いていた女性が独立し、売上も伸びて法人化して大きくなったり、といったサクセスストーリーがあったのではないか。

かつてのタイ企業はどちらかというとタイ的な家族経営が多かった。そこでこき使われつつ、スキルを身につけ、独立したり転職して、段々とタイの女性全体の地位が上がってきたのかもしれない。たとえば、タイスキで有名な「MK」も中国人経営のレストランを従業員の女性が買い取って大きくしたという話だ。そんな物語があっての今なのではと想像する。

早々に隠居して、孫と遊ぶタイ女性。

タイでは離婚後に男性が子どもの養育費を払うことは都心部くらいのことで、地方ではそのケースは少ない。自分本位の男性はほかの女性との浮気もあって、離婚率が高い(そもそも日本のように入籍せず、内縁関係も多いが)。そうなると、子どもや家族を養うために女性が働くしかないのは事実だ。

しかし、以前は屋台や家族経営の会社で馬車馬のように働かされる以外に稼ぐ方法はなかった。そこから這い上がって来たのがタイの女性たちだ。

 

タイもパイロットに女性がなれる時代に

男女雇用機会均等法の制定から30年以上が経った今の日本では、今さらそのことを口にすることもないが、タイは職業によっては今も明確に女性が就けないものがある。警察の事務以外の部署、兵士などと、いろいろだ。職業というと語弊があるが、僧侶もそうだ。白い袈裟を着た尼僧もいるにはいるが、タイ仏教では正式には僧侶と認められていない。

職種あるいは職場によっては男性だけを雇うところも少なくない。

そのため、できる範囲で努力し、タイ女性は登りつめてきた。近年はタクシー運転手やバイクタクシーにも女性が見られるようになり、さらに女性の社会進出先は増えてきたように思う。

そして近年ではネットの発達によって頭脳労働をはじめとして働き方の幅も広がってきた。スマートフォンのアプリで食事の配達が依頼できるようになったが、その配達員にも女性が見られる。IT関連の戦略PRに女性アドバイザーがいるし、高架電車のBTSの運転手、民間航空会社のパイロットでも女性がいる。2016年にはタイ空軍が女性パイロット候補を採用もした

また、会社員という生き方も定着し、大卒の女性が外資系などの比較的高給な職場をすぐにみつけることもよく聞くようになった。これからもタイ社会は女性の進出が進み、先進国以上に性別が関係ない世界になっていくことだろう。

 

 

編集:ネルソン水嶋

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この記事を書いた人

高田 胤臣

高田 胤臣

1977年、東京生まれ。1998年に初訪タイ、2002年からタイ在住。タイの救急救命慈善団体「華僑報徳善堂」唯一の日本人ボランティア隊員。現地採用社員としてバンコクで日系企業数社にて就業し、2011年からライターになる。単行本数冊、AmazonKindleにて電子書籍を多数発行。執筆のジャンルは子育てネタからビジネス関連まで多岐に渡る。最近は「バンコク心霊ライター」の肩書きがほしく、心霊スポットを求めタイを彷徨う。

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