イオン人気で渋滞発生?マレーシアに溶けこむ日本文化と日本人コミュニティ

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※本記事は特集『海外の日本人街』、マレーシアからお送りします。

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マレーシアの日本人コミュニティは東南アジア3位の規模

マレーシア在住の日本人は約2万4千人。世界で12番目に日本人在住者が多い国で、東南アジアではタイ、シンガポールに次ぐ3番目の規模です(出所 外務省「海外在留邦人数調査統計 平成30年版」)。日系企業は1295社あり、進出や移転により日本人在住者数も増減します。

マレーシア日本人商工会議所のオフィス。

近年は、駐在や留学以外での日本人滞在者も増えています。マレーシア政府は2002年から、一定の財産証明により最長10年の滞在資格を与える「マレーシア・マイ・セカンドホーム」(MM2H)プログラム を実施。120か国から累計3万9千人が参加していて、日本人は約1割。国別では中国に次ぐ参加者の多さになっています。

日本人が多いのは、クアラルンプールとその近郊、ペナンで、最近ではシンガポールに近いジョホール・バルに住む人も増えています。

 

クアラルンプールの日本人街はモントキアラ

首都圏で在住日本人が多いのは、北西部にあるモントキアラ地区。新しい高層住宅が多いこと、インターナショナル・スクールがあることから外国人が多い地域で、30か国以上の人が住んでいるともいわれています。日本人コミュニティもそのひとつ。

モントキアラの高層コンドミニアム群。

外国料理のレストランや美容室、教会、習い事もできる文化施設などがそろっていて便利なので、外国人だけでなく、経済的に余裕がある層のマレーシア人も住んでいます。

モントキアラのショッピングセンターには、日本の子どものための学習塾もある。

サウジャナ地区にある日本人学校に近いため、子どもがいる日本人駐在家庭には根強い人気があり、日本食レストランや日系の美容室・マッサージ店、日本人医師がいる病院などもあり、日本人には情報が得やすく、またサービスが利用しやすい場所です。反面、意外と濃密な日本人社会でもあります。

サウジャナ地区にある、クアラルンプール日本人学校。

新しく開発されたモントキアラは、首都圏の鉄道網からはずれた場所です。そのため、ショッピング・モールが運行するシャトルバスを除くと、移動手段は自動車が主流で、「陸の孤島」ともよばれてきました。しかし、2017年のMRT開通により連絡バスで地下鉄駅に接続できるようになり、交通の便が大幅に改善。

「MRTに乗ろう」と書いてある、MRT駅連絡バス。

日本人学校のあるサウジャナも、最近まで公共交通が不便で、駐在夫人たちはシャトルバスを利用して買い物や習い事に出かけていました。こちらは2016年にLRTのアラ・ダマンサラ駅ができたために移動が格段に便利になり、高層コンドミニアムの新築も盛んです。

 

公共交通で利便性が向上、日本人の居住地域も拡大?

1980年代前半、首都圏の日本人在住者は中心部のアンパンと、郊外の住宅地に住んでいました。アンパン地区には1964年から1994年まで日本人会のクラブハウスがあって(1995年にセプテーに移転)何かと便利だったのと、郊外のダマンサラやプタリンジャヤなどは治安がよく、家賃が安価で住みやすかったという事情があります。

日本人会はこうしたイベントを企画・主催するほか、習い事の場も提供している。

1980年代後半に入ると、南西のタマン・デサで高層コンドミニアムの新築が始まり、日本人居住者が増えました。それまでの一軒家は、居住スペースは十分あるものの、防犯上の備えは各々の家でしなければならず、庭木や家の手入れのために使用人を雇わなければなりませんでした。そこで維持・管理がしやすく、守衛が警備するコンドミニアムは、慣れない外国での駐在家庭には魅力があったのです。

タマン・デサのコンドミニアムは、モントキアラに比べると低層で、敷地に余裕がある。

1993年になると、それまでセプテーにあった日本人学校が、広い敷地が確保できるサウジャナに移転します。ちょうどこの頃、ゴム園だった場所を開発したモントキアラで高層住宅の建築が始まり、学校にも近いという理由から日本人駐在家庭もそちらに移り住むようになりました。

近年、深刻化する渋滞の緩和のため、首都圏では公共交通が整備され、MRTが開通したほか、駅を起点にしたバスも運行されています。便利になった地下鉄沿線では、宅地開発と住宅建設が加速化していて、これまでは自動車でしか行けなかった郊外に住む日本人も増えてきました。

地下鉄とバスで車依存は変わるか?マレーシア首都圏の通勤事情

在住日本人の暮らし方も多様化していて、企業駐在員以外にも、現地採用社員として働く人も増え、ほかにも留学、MM2Hなどで滞在する人もいます。今まで外国人の少なかった地域のコミュニティに、日本人が加わっている印象があります。

 

セールには「イオン渋滞」も起こる日系スーパーマーケット

ところで、マレーシアで日本人会が主催する盆踊り大会には、毎回3万人が参加していて、国外で開催される盆踊りとしては最大規模。屋台などを目当てに参加する地元の人もいて、当日は駐車場を見つけるのも困難という盛況ぶりです。

参加者3万人!常夏の国で楽しまれる日本の夏の風物詩とは?

1980年代に長期政権を率いたマハティール首相が、日本や韓国を手本とすべし、とした「ルック・イースト」政策をとっていたこともあり、日本企業のマレーシア進出が進みました。日系企業で働いたり、取引などで何らかの接点をもった人も少なくありません。人の往来も盛んで、マレーシアからは過去30年あまりで累計1万6千人(外務省、2017年)が、日本に留学したり研修に行ったりしています。

特に食は、和食の健康的なイメージで人気があります。日系のほか、地元資本の日本食店もあり、今や日本ラーメンを食べ歩く地元ブロガーも登場。若い世代では、アニメやJ-POP、ゲームを通じて日本に親しんでいる人も少なくありません。

なぜか豚骨味が多い、マレーシアの日系ラーメン店は華人に人気。

物販についても、日系のスーパーマーケット「イオン」はマレーシア全土に34店舗あり、セールの時期には「イオン渋滞」が起きる、といわれるほど地元のお客を獲得しています。

クアラルンプールで最大の書店は、日系の紀伊國屋書店ですし、中心街ブキッ・ビンタンにあるショッピングセンター「パヴィリオン」には、日本の飲食店などを集めた「トーキョー・ストリート」も人気スポットになっています。先頃改装した日系デパート伊勢丹ロット10は、全館を「クールジャパン」の拠点として、高品質な日本製品を紹介しています。

新しくなった伊勢丹の売り場は、日本のデパートの雰囲気。

2013年からは短期滞在のヴィザが免除されたため、日本へ観光に行くマレーシア人もぐっと増えました。日本人の集まるところに行って日本食を食べる、日本のものを買うのは、少なくとも都市部の人には珍しいことでもないようです。

「便利でオシャレなもの」が売っている店として認知されているダイソー。

 

日本人街を飛び出しマレーシアに浸透する日本文化

先日は、買い物に行った店で「オニギリの作り方を教えて!」と店主に話しかけられました。説明しましたが、どうも握り方が難しいようだったので、おにぎりの型が売っていることを伝えると、「わかったわ。ダイソーで買ってくる!」とのこと。思いがけないところで、日本への関心の高さと浸透ぶりを感じたできごとでした。

地元のおかず屋さんで見かけた「おにぎり」はコンビニエンスストア風。

今では、地元のおかず屋さんでも、まるで日本のコンビニエンスストアに置いてあるようなシートにくるまれたおにぎりが売られています。食は一例ですが、当初は在住日本人を受け皿に入ってきた日本文化は、今では都市部を中心に、地元の人にも受け入れられているといえそうです。

 

 

編集:ネルソン水嶋

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この記事を書いた人

森 純

森 純

マレーシアを中心に東南アジアを回遊中。東南アジアにはまったのは、勤めていた出版社を辞めて一年を超える長旅に出たのがきっかけ。十年あまりの書籍・雑誌編集の仕事を経てマレーシアに拠点を移し、ぼちぼち寄稿を始めました。ひとの暮らしと文化に興味があり、旅先ですることは、観光名所訪問よりも、まずは市場とスーパーマーケットめぐり。街角でねこを見かけると、つい話しかけては地元の人に不思議がられています。

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