ゴリラの鳴き声は「ウホ」じゃない!? 動物王国ルワンダで会える「ビッグ5」とは
※本記事は特集『海外の動物』、ルワンダからお送りします。
ルワンダの最高紙幣には、人ではなく「ゴリラ」が印刷されている!
日本の最高紙幣・一万円札に描かれている人物と言えば福沢諭吉ですが、ルワンダでは誰が描かれていると思いますか?
実は人ではなく、マウンテンゴリラなのです!!
最高額紙幣である5000ルワンダ・フラン(約600円)札に描かれています。世界の約7割のお札に肖像画が使われているそうですが、それは人間が「顔」を認識する能力に優れており、偽造防止に適しているため(参考:man@bou)。しかし、5000ルワンダ・フランだけではなく、ルワンダのお札にはいっさい肖像画が描かれていません。
アフリカ全体でも、これまでに紙幣に採用されたことのある人物はたった17名で、国数としては10カ国(参考:Wikipedia)。アフリカの国数は56カ国であることを考えると、少ないですよね。
その理由は、①政治的・経済的不安定さから文化の発展が難しく、著名な文化人が輩出されづらい。②政治的・民族的対立から、お札への政治家の採用には賛否が分かれる。③高度な偽造技術がないため肖像画にする必要がない。などかなと推測していますが、実際のところは分かりません。
鳴き声は「ウホ」じゃない!? マウンテンゴリラのトレッキングツアーへ
歴史上の偉人や英雄を差し置いて、最高額紙幣に君臨するルワンダのマウンテン・ゴリラ。実は絶滅危惧種に指定されており、現在世界で880頭しかいないのです。それほど希少な彼らが生息している場所はルワンダ、ウガンダ、コンゴ共和国の国境に沿って伸びるヴィルンガ山地の死火山のみ(参考:WWF)。
そのレアさとゴリラ自体の魅力から、ここで開催されているマウンテンゴリラのトレッキングツアーは大人気。参加するために必要な許可証の料金は一人あたりなんと1500USドル。つまり約16万円です。恐ろしい……。
2017年に値上がりしてしまったのですが、私は運良く値上がり前にツアーに参加していたのでそこまで出費がかさむことはありませんでした(当時、ルワンダ在住外国人は375ドル、一般旅行者は700ドルでしたが、現在は一律1500ドルです)。
そんな高額なツアーでも客足は途絶えていないので、ゴリラの人気の高さが伺えますね。しかし、私はゴリラには大して興味がなく「ルワンダで一番有名な観光地だから、とりあえず行っておくか」くらいの軽い気持ちでした。
しかし、いざツアーに参加してみると、
か、かわいい……!!
と、モフモフした赤ちゃんゴリラの愛らしさに骨抜きになってしまいました。日本の動物園などで見られるニシゴリラとくらべて、体毛が長くて腕が短いことが、ヒガシゴリラの亜種であるマウンテンゴリラの特徴。だからゴツゴツしていなくて丸っこいのです。
しかもツアーは、先頭に立つガイドさんが生い茂る木々をナタで切り開きながら進んでいくので、道らしい道はほとんどありません。そのため追いかけていたゴリラさんがふいに引き返してくると、道を開けなければならないことも。
どうです、このド迫力!! カメラのブレ具合が私の動揺の大きさを表しています。事前に知人から「ゴリラにバーン!ってされないように気をつけてね」と言われていましたが、これは本気でバーン! ってされるやつです。
しかし、ここのゴリラたちは温厚ですし、そんな被害が出ないように事前にきちんと接し方の説明もおこなわれます。その中では「ゴリラ流あいさつ」を学ぶのですが、ゴリラの鳴き声というと「ウホウホ」が思い浮かびますよね? でもここで教わったあいさつは違って、喉を鳴らすように「ン゛ッン゛ー」と音を出すのだそうです。
いやいや、そんな馬鹿な。ゴリラの鳴き声は「ウホウホ」って相場は決まってるんですよ。「ン゛ッン゛ー」だと痰が絡んだおじさんみたいだし、「ウホウホ」のほうが友好的な感じがするし。まあ、騙されたと思ってやってみるか。
「ン゛ッン゛ー ン゛ッン゛ー」
ふ、振り向いたーーー!!!
「ン゛ッン゛ー!ン゛ッン゛ー!!」(興奮して連発するタケダ)
すごい……ゴリラとコミュニケーションが取れました!! これはもはや「ゴリラと友だちになれた」と言って良いのではないでしょうか。地声が高い私は連続ン゛ッン゛ーにより速攻で喉がつぶれましたが、それと引き換えにかけがえのない思い出をつくることができました。
ライオンやサイに会える! アフリカらしさ全開のサファリへ
ルワンダには、マウンテンゴリラ以外にも珍しい動物がたくさんいます。
お笑い界で「ビッグ3」と言えばタモリ・たけし・さんまの三名ですが、動物界にも同じような括りがあることはご存知ですか? それはライオン・ヒョウ・サイ・バッファロー・ゾウの5種。かつて狩猟対象として最も危険な動物たちと考えられていたことから、「ビッグ5」と呼ばれています。
実際に目にすることは簡単ではないのですが、ルワンダではこれらの動物に会うことができるのです! その場所はアカゲラ国立公園。ルワンダ東部のタンザニアとの国境沿いにあり、首都のキガリからは車で2時間半ほど。
実は、ルワンダでビッグ5が見られるようになったのは昨年の2017年から。それまでヒョウ・バッファロー・象はいたものの、外国人観光客誘致のためライオンとサイを他国から「お引っ越し」させたのです。なかなかのパワープレイですよね。内陸国で資源の乏しいルワンダが、観光を外貨獲得の主軸に据えていることがうかがえます。
南アフリカから、ライオンは2015年に、サイは2017年にやってきました。もともとは二種類ともアカゲラに生息していたのですが、民族対立に端を発する1994年のジェノサイド(大虐殺)で避難民が公園内に逃れ、家畜や自分たちの身を守るためにライオンを殺してしまったのです。サイについては、乱獲が原因で姿を消してしまったと言われています。
ビッグ5が復活したばかりのアカゲラ国立公園へ!
そこで、実際にビッグ5が復活したアカゲラ国立公園に行ってみました。同行した友人が撮ってくれたド迫力の写真とともに、動物たちの様子をお伝えします!
サファリカーで園内を走ること数十分。いました! いました!
ゾウ発見! 乗っているサファリカーにまで、ドシンドシンと足音と振動が伝わってきそうなほどの大迫力です! さらに進んでいくと……
バッファロー! 頭には小鳥が乗っています。彼らは皮膚についた虫を自分で取ることができません。それを小鳥が食べてくれるため、こんな風に仲良くしているんですね。ほのぼの。ほかにもシマウマやカバ、インパラなどに会うことができましたが、残念ながらライオン、ヒョウ、サイの姿を見ることはできませんでした。さすがビッグ5、一筋縄ではいきません。
しかし、以前訪れたタンザニアのサファリで残りの3種類も制覇することができたので、そちらの様子もお伝えしたいと思います。
最初に発見した動物は、ヒョウ!
草原を悠々と歩くその姿、引き締まった筋肉、物静かな佇まいに風格を感じます。
こちらは見つめ合うライオンのカップル! ガイドさんが「もうすぐ『セレモニー』が始まるよ」というのでしばらく待っていると……
「セレモニー」スタート!!そういうことか……。さっき見つめ合っていたときは、愛のことばをささやいていたのかもしれませんね。
しかし、最後のサイだけは、タンザニアのサファリでは5日間かけて3ヶ所をまわりましたが見つけることができません。諦めかけていたところ、「あそこにサイがいるよ!」と遠くを指さすガイドさん。しかしその方向を見ても、まったく分からない。
彼にカメラを渡し、その「サイ」とやらをズームで撮影してもらいました。それがこちら。
え……?
溢れ出る「ただの岩」感……!!
でも、ガイドさんは見たことのないほどのドヤ顔をしています。うん、あれがきっとサイなんだ。これで5種類制覇だし。サイってことにしておこう。ということで、見事(?)サファリのビッグ5を制覇!
なお、ビッグの5が見られる国は、ボツワナ、ザンビア、ウガンダ、ナミビア、エチオピア、南アフリカ、ケニア、タンザニア、ジンバブエ、コンゴ共和国、ルワンダ、マラウイ、があるそうです(参考:Wikipedia)。冒頭で「ビッグ5に会えるルワンダがすごい!」という雰囲気でお伝えしましたが、実は全部で12カ国もありました。
私が訪れた国はルワンダとタンザニアだけですが、「ビッグ5を見たい!」「アフリカらしい広がる荒野を眺めたい!」という方にはタンザニアを、「難易度の高い動物探しを楽しみたい!」「千の丘の風景を堪能したい!」「(移動に時間のかかるタンザニアとくらべて)短時間でサクッと動物を見たい!」という方にはルワンダをおすすめします。
ルワンダにイヌがいない「衝撃が走る」理由
マウンテンゴリラやビッグ5のように日本では見られない動物がたくさんいるルワンダですが、逆に日本では当たり前にいる「ある動物」がまったくいません。
それが「イヌ」。2年間の現地生活で見かけた数はたったの2~3匹。上記の写真は農村部の家庭調査をしていたときに、たまたまブラブラしている野良犬を見つけたので、珍しくて撮影しました。
イヌをめったに見ることがない理由は、前述のジェノサイドが関係しているという噂を耳にしたことがあります。そこで、その真偽をルワンダ人の友人に聞いてみました。
ルワンダってイヌが少ないよね
そうだね
あれはジェノサイドに関連してるって聞いたことがあるんだけど、本当なの?
本当だよ。イヌはジェノサイドの間、殺害の道具として使われたり死体を食べたりしていたから、それを嫌った人たちに殺されてしまったんだ
そうだったんだ……。たくさんの人が亡くなった悲惨な事件だけど、人間以外にもそんな影響が出ていたんだね
フツ族とツチ族の民族対立が激化し、およそ80~100万人が犠牲になったとされています(参考:外務省)。あれから24年が経ち、いまではそんな面影をまったく感じさせず「アフリカでもっとも治安の良い国」と言われるまでになったルワンダ(参考:The Telegraph)。
それでも少し踏み込んでみると、当時の悲しい事実に行き当たってしまったりするものです。民族の対立もなく、穏やかに愛犬と暮らすことのできる日本での生活を慈しみたくなりますね。
異国の動物から学ぶ新たな生き方
以上、ルワンダを中心としたアフリカの動物たちをご紹介しました。
我々人間は、動物たちからたくさんのことを学ぶことができます。バッファローと小鳥の種を越えた関係性、ライオンのカップルがセレモニーの前に見つめ合っていた空間のやさしさ、マウンテンゴリラのお父さんが赤ちゃんゴリラに向ける愛ーー。
日本で生きているだけでは想像もつかない風景が、世界には広がっています。異国の動物たちから新たな生き方を学ぶため、まるで違う生態系の国々に足を運んでみてはいかがでしょうか。
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編集:ネルソン水嶋
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この記事を書いた人
タケダ ノリヒロ
日本の大手食品メーカーで3年勤務した後、退職して青年海外協力隊としてルワンダの農村で2年間活動。18年夏から当国でスタディツアーを運営。身長と体重と生まれた年がテイラー・スウィフトと同じです。個人ブログ『タケダノリヒロ.com』(月間PV12万)/ルワンダ情報専門サイト『ルワンダノオト』編集長/Twitterはこちら。