チーズハットグからトッポギまで!屋台フードに見る韓国おやつ最前線

※本記事は特集『海外のおやつ』、韓国からお送りします。
韓国発の流行おやつ、チーズハットグ
ここ最近、日本でも流行している韓国の屋台フードがあります。その名も「チーズハットグ(치즈핫도그)」。チーズ入りのアメリカンドックなのですが、韓国ではアメリカンドックもホットドックのことも「ハットグ(핫도그)」といいます。

チーズハットグ
韓国では2016年7月から「明朗ハットグ」というお店を通して、チーズの入ったハットグが売り出されて人気を博し、この店が全国各地に広まるとともに一気に流行フードになりました。これらはSNSなどを通して日本にも波及しています。
米粉で作られたアメリカンドックの先端にモッツアレラチーズやチェダチーズが入っていて、「びよーん」と伸びることでも知られています。ハットグは砂糖をまぶし、ケチャップやマスタードをかけて食べますが、この店では数種類のソースが用意されています。
韓国のおやつは屋台フードを抜きには語れない
韓国ではこうしたおやつのことを「間食(간식、カンシク)」といいます。韓国の伝統餅や海苔巻き、サツマイモはもちろん、スナック菓子などもおやつとして食べるのですが、屋台フードが多様なので、これらを抜きにして語ることはできません。
道端には「露店(ノジョム、노점)」とよばれる屋台が多い韓国では、学校帰りの子どもたちや買い物で出かけた主婦や移動中の人たちも小腹が空くと立ち止まって、買い食いをします。

韓国の街中にある露店。学校帰りの中高生が群がる
こうした屋台文化が根付いたのは、手っ取り早く商売が始められるという事情もあるでしょうが、冬のソウルは日中でも氷点下に達して肌が痛いほど冷え込むため、体を温めるためにも何かを食べたくなるから、ということも理由かもしれません。
また韓国ではチーズハッドグのように、屋台や小規模のお店から飛び火するようにして流行フードが生まれるので、いちど火が付くと一気に広まります。そのなかにはロングセラーになる食べ物もあるのですが、廃れるスピードも早いのです。韓国人も認める「熱しやすく冷めやすい国民性」は、流行の屋台フードにもよく表れています。
韓国の屋台フードを代表する二つの「トック(お餅)」
韓国のおやつにはどんなものがあるでしょうか。まずは庶民に親しまれる屋台フードとしてポピュラーなものを二つ挙げることにします。
屋台おやつの定番トッポッキ。朝鮮時代は辛くなかった。
「おやつ、間食」と聞いて誰もが最初に思い浮かぶものは、棒状になった餅(떡、トック)を甘辛く炒めたトッポッキ(떡볶이)です。日本では「トッポギ」という名で知られていますが、この「ポッキ(볶이)」は「炒めたもの」という意味があります。
繁華街の屋台はもちろんのこと、学校近くの小さな商店の軒先でも売られていたりするなど、韓国人に最も愛されているといっても過言ではないおやつです。
現代ではコチュジャンベースのソースに絡められた辛いお餅として認識されていますが、今のような形で屋台のおやつとして一般的に広まったのは、1970年代以降のことでした。

トッポギ
トッポッキはかつての宮中料理のメニューのひとつでもあり、野菜を入れて醤油ベースで味付けして炒めたもので、今のように辛いものではありませんでした。現在ではそれが「宮中トッポッキ(궁중떡볶이、クンジュントッポッキ)」という名で、一部のお店で提供されています。

宮中トッポッキ/🄫jetalone
屋台フードとして辛い物が好まれるようになったのは、ストレスが影響しているという説もありますが、辛さに慣れてより刺激的なものを求めるようになったこともひとつの理由だといえるでしょう。
そして最近ではカップに入って電子レンジで調理できる即席のトッポッキも、スーパーやコンビニで販売されるようになっています。
開港期に流入した中国由来のお焼き
屋台フードのなかで代表的なものをもう一つ挙げるとするならば、「ホットク(호떡)」です。「ホ(호)」は「胡」と書き、「中国の餅」を意味しています。朝鮮が開港した後に仁川を通して、中国の商人からもたらされたといわれています。
小麦粉で作られた生地のなかには、シナモン入りの黒砂糖や小豆餡などが入っているため甘みがあり、それなりの厚みもあるので、小腹を満たすのに最適です。
ここ数年のあいだに釜山・南浦洞の屋台で人気を博した「シアッホットク(씨앗호떡)」と呼ばれる、種(씨앗、シアッ)やナッツを挟んだホットクが各地に広まり、ホットクの新たな形態として定着しつつあります。
なかにはチーズを入れたものもありますし、ソウルの南大門市場ではチャプチェ(春雨と野菜を炒めた料理)を入れた野菜ホットクもよく知られています。
「トッポッキ」「ホットク」のように「トック(餅)」という名前が入ったおやつは、韓国で最もポピュラーで、庶民に愛されている屋台フードだといえます。
屋台で売られている「パン」のあれこれ
韓国では「食パン」や「コッペパン」のような、小麦粉を発酵させて焼いた「パン」といえるもののほかに、小麦粉が原料とし、パンのような食感がするものなら、あらゆるものを「パン(빵)」と呼びます(ケーキは例外ですが……)。例えばシュークリームやカステラといったものも「パン」のカテゴリに入ります。
日本では「パン」とは言えないものばかりですが、そのなかでもおやつとして親しまれている屋台フードをご紹介します。
「パン」のなかでも菊花パン
屋台フードの代表的存在が、菊花パン(국화빵、クッカパン)です。型に菊の文様があり、そこに小麦粉を溶いた生地を流し込んで、なかに小豆あんを入れます。最近ではクリームが入っているものもあります。

菊花パン。この写真は菊の模様が薄め。
このように型に生地を流し込み、餡を入れて焼く食べ物は日本統治時代に朝鮮半島に伝わったものだといわれています。これは次に紹介するおやつも同様です。
韓国では「たい焼き」は「フナパン」という
韓国の屋台でも「たい焼き」のようなものをよく見かけます。やはりこれも日本統治時代に流入したとされており、「鮒(ふな)パン」という意味の「プンオパン(붕어빵)」という名で売られており、その形も味も日本のたい焼きと違いはないようです。

プンオパンは、たい焼きとほぼ同じ形
プンオパンの他にも、「鯉パン」という意味の「インオパン(잉어빵)」という名前で売られていることもあります。なかにはご当地ものも存在しており、カニが有名な地域のお祭りではカニの形をしたものを見かけたことがあります。
卵が入った今川焼きは、ケランパン
プンオパンのように小豆餡ではなく、韓国には卵が丸ごと入った「ケランパン(계란빵、ケランパン)」という食べ物があります。韓国では卵のことを「鶏卵(계란、ケラン)」といいますが、これは卵が入った今川焼きであり、大判焼きです。

当初登場した今川焼き(大判焼き)タイプのケランパン
1997年のアジア通貨危機の連鎖により、IMFショックと呼ばれる国家破綻の危機に陥った韓国では街に失業者があふれ、そのころ屋台が急激に増えたのですが、その頃に工夫を凝らして生み出されたおやつが「ケランパン」。
今では中央が盛り上がったタイプが主流になっており、パンケーキに卵が入ったようです。ふわふわした生地のなかに入った卵のほどよい塩加減に旨味があり、卵をよく食べる日本人の口にもあうおやつだといえます。

新しい形のケランパンで、現在はこれが主流。
筆者がこの形のケランパンを見かけるようになったのは2011年頃でしたが、おそらくその前後から広まったのではないかと思います。
韓国の人たちが懐かしむ、昔ながらの駄菓子
次にお伝えするのは、韓国人が昔懐かしむ子どものおやつです。
かつて道端で売っていた韓国風のカルメ焼き
道端で小さな椅子に腰かけて、鉄板の上で作られる「ポプキ(뽑기)」というカルメ焼き。タルゴナ(달고나)ともいいます。砂糖を溶かしてベーキングソーダを入れてふくらましたあとに押し機を使って平べったく伸ばし、つまようじを使って模様を入れます。
割らずに上手く模様を入れられるかが難しく、子供がゲーム感覚で楽しめるおやつでもあります。今でも時々、繁華街の道端で売られているのを見かけます。
駄菓子のことを「不良食品」という
韓国では駄菓子のことを「不良食品(불량식품、プルリャンシップン)」といいます。駄菓子のみならず、粗悪な食品に対しても同じような言い方をします。こうしたお菓子はカラフルに着色されており栄養的にも問題があるといわれたことから、こう呼ばれています。

駄菓子屋の軒先に並べられた駄菓子
今では駄菓子屋自体が少ないですが、懐古的なものとして観光地化された場所の小さな商店や屋台で売られていたりします。
地方発で全国的に広まった人気のおやつ
高速道路のSAでも人気のクルミ入り焼き菓子
地方発で全国的に広まったおやつはいくつかありますが、そのなかで最もポピュラーなものは「ホドゥガジャ(호두과자)」といい、直訳すると「クルミ菓子」。粒になったクルミが生地に埋め込まれた焼き菓子です。高速道路のサービスエリアでよく売られています。
これは韓国の中部にある「天安(천안、チョナン)」が発祥の地とされ、これも日本統治時代に生まれたお菓子です。菊花パンや、プンオパンと同じように「パン(빵)」の一種だといえますが、パンと呼ぶよりも「ホドゥガジャ(호두과자)」という名前のほうが有名です。
日本人にも人気の甘辛鶏唐揚げ
ここ数年で特に人気が高まっているのが、「タッカンジョン(닭강정)」。鶏のから揚げを甘辛く味付けしたものです。ヤンニョムという韓国の合わせ調味料で和えたヤンニョムチキンにもよく似ていますが、こちらはフライドチキンというよりも「唐揚げ」に近いもので、日本人観光客にも人気が高いおやつです。

餅入りのタッカンジョン
「タッカンジョン」という料理は1970年代の新聞にも載ってはいるのですが、2010年に専門のフランチャイズチェーンが登場したことが契機となったようで、2012年頃からソウルの街中でタッカンジョンを売り始める店が街に急増したことを記憶しています。
それ以前にも仁川(インチョン)の新浦市場や、韓国の北東部にある束草(ソクチョ)の束草中央市場にはかねてより有名な店がありました。この頃は地方の有名店がソウルへ続々と進出してきた時期。経済発展を遂げた韓国の人々の暮らしに余裕ができ、地方へ出かける人が増えたことも、こうした食べ物が広まったひとつの理由かもしれません。
美味しいおやつは日韓両国で共に広まる
隣り合う日韓には政治的な軋轢はありますが、両国を行き来する人々が美味しいと思ったおやつや料理はそれぞれでアレンジが加えられて浸透していきます。辛さや塩辛さなど好みに違いはあるとはいえ、好まれる味覚に大きな差はないのかもしれません。そんなこともあり、今後韓国でどんなおやつが流行るかに注目しておきたいものです。
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編集:ネルソン水嶋
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