タイ料理はナンプラーに始まり終わる! しかし「食べるラー油」に「天然塩」も絶品だ

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※本記事は特集『海外のソウルソース』、タイからお送りします。

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タイ料理の基本はナンプラー、ご飯にもぶっかけて食べられる

タイで「ソウルソース」といえば、真っ先に思いつくものは「ナンプラー」です。いわゆる魚醤で、タイでは主にカタクチイワシ(アンチョビ)などで作られます。ナンプラーを直訳すると「魚の液体」。思いのほか味気ない表現なので、日本でも今はナンプラーで通っていますね。

人気のタイ式ヤキトリはナンプラーなどを塗って焼いている。

「いやいや、それはソースというより調味料でしょう?」というツッコミもあるかもしれませんが、確かにメインは調味料として使われるものの、ナンプラーはご飯やおかずに直接かけるソースとしても利用されます

製造方法は簡単。下処理をしないままカタクチイワシを壺などに入れ、その重量に対して30~50%にも相当する塩を入れます。工場によっては砂糖などほかの材料も使いますが、いずれにせよ共通してそのあと1年以上漬け込んで完成です。

カタクチイワシの乾物は南部のタイ土産物としても有名

実は、ナンプラーには等級があります。和食の一番ダシ、あるいは一番搾りのようなものだとイメージしてください。できたばかりの新鮮なナンプラーは濁りのない琥珀色の液体で、香りに雑味がなく、魚本来のかぐわしさが残っています。

スーパーなどのナンプラーコーナーには、特級品と、1~3級品が並べられているので、上品なナンプラーが欲しければ特級品か1級品を選びましょう。2級品は1級を絞ったあとに食塩水などを加えた二番絞り、3級品はさらに残ったカスに添加物を加えたものになります。

大手スーパー「ビッグC」の棚にナンプラーがずらりと陳列される

スーパーに行けば棚一列がすべてナンプラーで埋め尽くされているほど、タイでは大量に消費され、また同時にたくさんのメーカーがしのぎを削り合っています。中にはイカの絵柄をトレードマークにした有名ナンプラーもありますが、冒頭でも紹介しているように原料は主にカタクチイワシです。絵柄との因果関係は謎ですが、イカで作っているわけではありません。

 

玉子焼きにはチリソース、タイ定番の料理とソースの組み合わせ

手前のソースは、甘い黒蜜のような醤油にごまを入れたもの。

ナンプラーだけがタイのソースではなく、料理ごとに決まったものがあります。もちろん、ほかのソースで食べてもかまいませんが、飲食店で定番を外して食べているとタイ人からは奇異な目で見られてしまうでしょう。それくらい、現地では決まりきった組み合わせなのです。

ケチャップのような「チリソース」(写真左)は生ガキなどにも使う

代表的な定番ソースでは、卵焼きにつけるケチャップのようなソース「チリソース」があります。見た目こそトマトを使っているように赤いですが、原材料はトウガラシとニンニクを中心にできています。とはいっても、ソース自体はまったく辛くなく、子どもでも食べられるソースです。ほかにはカキの卵とじのような「オースワン」にも使います。

カキのお好み焼きとも訳される「オースワン」はモチモチ、アツアツでおいしい。

中でもボクがイチオシしたいのは「ナムチム・ガイ」です。直訳すると「鶏用ソース」になり、その名の通り、鶏肉料理に使われます。日本人に人気のタイ式ヤキトリ「ガイヤーン」、から揚げの「ガイ・トート」、ときには揚げ春巻きにも使われます。

ガイヤーンには、バンコクでは「ナムチム・ガイ」、東北地方では手前の辛いソースが好まれる。

原材料は先のチリソースと同じトウガラシとニンニクですが、こちらの方は最初は甘く、徐々に辛さを感じる味わいです。鶏肉に使うだけでなく、いろいろな料理に合います。タイらしい味わいですので、マニアックな人は食パンに塗ってトーストにもして食べたりするほど

 

日本でも流行ればいいのに! タイ版・食べるラー油「ナムプリック」

「ナムプリック」の専門店は手作りのものばかりでおいしい。ただ、辛い!

タイ式の味噌でもあり調味料でもある「ナムプリック」も定番ソースとしてオススメです。大まかに分けると乾燥バージョンと味噌バージョンがあり、前者はふりかけ、後者は『食べるラー油』の元祖といった印象。肉や魚、野菜などから作られ、数え切れないほどたくさんの種類があり、日本人の味覚でも食べられる種類も多いです。

ラー油と肉で作った「ナムプリック」は、野菜につけてもご飯にかけてもおいしい。

ナムプリック専門店もあるほどで、料理にかけるソースとしてでなく、ご飯のお供に、野菜のディッピングにと、なんにでもなれる万能性を持ち合わせています。しかも、栄養バランスがよく健康的で、なぜ日本で流行らないのかと不思議に思うくらいです

グリーンカレーなどのペーストも「ナムプリック」の一種と言える。

タイ料理の代表格である「グリーンカレー」や「トムヤムスープ」のペーストもまたナムプリックですから、ナンプラーと並んで大切なソース兼調味料と言えるでしょう。

 

濃い味に飽きた外国人には救世主? サッパリソースのプリック・ナンプラー

タイ料理の基本はナンプラーであると断言してもいい!?

タイ料理は、和食のように素材の味を活かすよりも、調味料やソースの味を前面に出したものになります。そのため、外国人には最初のうちはおいしいと感じますが、味が濃くて徐々に飽きてくることが多く、料理により定番ソースがほぼ決まっているので辛いものも避けづらい。そんなときに救いの手となるソースが、「プリック・ナンプラー」です。

作り方は簡単で、「プリック・ナンプラー」を出せないタイ料理店はこの世に存在しないと言ってもよい。

プリック・ナンプラーは、ナンプラーにトウガラシやニンニク、場合によってはライムを搾ったりしたソースです。一般的にはチャーハンを注文すると出てきますが、肉料理などなんにでも合う万能性も持ち合わせています。

さっぱりしていて、それでいて塩分もあるので汗をかいた日にはちょうどいいでしょう。暑さで弱った胃腸をトウガラシが温めて元気にしてくれるというメリットもあります。

 

健康食、天然塩ブーム到来! しかし行き着くところはナンプラー?

タイ料理では主にナンプラーを中心に塩分を加えられるため、塩をまったく使わない料理も多いです。しかし、近年はタイでもオーガニックや健康食が注目されており、その中で天然塩が人気になっているようです。

タイの天然塩はそれだけでもおいしい。なによりも安い!

サムットソンクラーム県の塩田。すでにあらかた回収されているが奥に塩の山が見える。

バンコクから西に向かったサムットソンクラーム県はその有名産地。塩田で海水を蒸発させ、塩の結晶を回収していく製法を取っています。水上市場で有名な「ダムヌンサドゥアク」や、市場ギリギリを列車が通過する「メークロン市場」そばで売られているので、観光のついでに購入することも可能。6キロで150円程度と格安です。

メークロン市場は日に数回列車が市場ギリギリを通過する

タイの天然塩はミネラルがたっぷりだからか、それだけで酒のつまみになるほどのおいしさです。これはこれでいいものですが、塩は塩。やはりタイ料理のベースはナンプラーですから、塩だけでは本物のタイ料理は完成しません。タイ料理は調理もソースもナンプラー。つまり、ナンプラーに始まり、ナンプラーに終わるのです。

 

 

編集:ネルソン水嶋

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この記事を書いた人

高田 胤臣

高田 胤臣

1977年、東京生まれ。1998年に初訪タイ、2002年からタイ在住。タイの救急救命慈善団体「華僑報徳善堂」唯一の日本人ボランティア隊員。現地採用社員としてバンコクで日系企業数社にて就業し、2011年からライターになる。単行本数冊、AmazonKindleにて電子書籍を多数発行。執筆のジャンルは子育てネタからビジネス関連まで多岐に渡る。最近は「バンコク心霊ライター」の肩書きがほしく、心霊スポットを求めタイを彷徨う。

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