冠水、突風、ネット遅延!? 分かっちゃいるけどタイ人を振り回す雨季の雨

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※本記事は特集『海外の雨季』、タイ・バンコクからお送りします。

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タイでは雨の前に突風に注意するべし

雨の中華街。タイは雨が情緒的な雰囲気を醸し出すことはあまりないようです。

タイの雨季は毎年5月下旬ごろから10月末までです。

近年は必ずしもその通りではありませんが、2000年に入ったばかりのころはきっちり10月末で雨季が終わり、11月1日から乾季に入りました。今は6月に入っても雨が降り出さないこともあれば、11月にもまだ雨が降る、あるいは乾季でも雨が降ることもあります。

チャオプラヤ河の河口の写真を見ると、上の雨期直前、下の雨期終盤で水位が違っています。

タイは日本のように梅雨明け宣言のようなものはなく、いつの間にか雨季が終わります。一応季節の変わり目の発表はあり、タイ気象局のウェブサイトで情報発信されますが、あまりニュースにはなりません。ですが、長く住むとそんな宣言が不要なことがわかります。というのは、雨季が終わると肌でそれを感じることができるからです。ジメッとした空気が、突如カラッとしたさわやかな空気に変わります。

逆に雨季の入りはわかりづらいですが、毎日雨が降るようになると家族や友人と「いよいよ始まったか」と話し合ったりします。タイの雨季は始まりと終わりは安定しませんが、中盤は朝か夕方にドッと降ってすぐに止むという雨です。日本でいうゲリラ豪雨になりますが、それほど深刻な問題にならないのは、実に局地的に降るからです。

飛行機から撮ったタイの集中豪雨の様子です。本当に一点集中で降っていることがわかります。

極端に言えば、道路のこちら側は土砂降りなのに、向こう側は晴れているレベルです。そのため、例えば、お互い市内中心部に住んでいる友人との待ち合わせで「雨が降っている」と言っても、向こうはカンカン照りということはよくあること。とにかく一点集中で降るのがタイの雨の特徴です。

そんな降り方をするので、雨が降る前に強風が吹きます。低気圧と高気圧が入り交じることで強い風が吹くのでしょうが、ときにはその風が強すぎて、雨の前に負傷する人もいるほど。看板などが風に吹き飛ばされ、その下敷きになるのです。死者も出るほどですから、タイの雨期に訪れたとき、風が吹いたらまずは頭上に注意してください。

豪雨直前の突風で倒壊した看板です。これが自分の上に倒れてきたら……。

雨季ですから、雨が降るのは当然。しかし、それに対してなんら対策をしないのもまたタイ人です。突風で看板が倒れる事案は頻繁に発生しますが、だからといって風に強い建造物を建てる気は見られません。それから、傘を持たない人も多い。日本のように天気予報を見る習慣がないですから、邪魔になるので持たないということもあるのでしょう。そもそも降り方が局地的なため、バンコク各区の降雨の予報が存在しないのです。

 

近年は悪化の傾向に? バンコクの冠水がひどすぎる

こんな具合ですので、日本よりも多く走るバイクもまた、雨の影響で動けなくなります。橋の下などで雨宿りをして、その結果、仕事が進まなくなって、経済活動が停滞。車の渋滞も悪化しますから、とにかくすべてが遅延してしまいます。

ラノーン県の温泉で雨の中足湯に浸かる人たちですが、傘を差している人はふたりだけです。

特に最近はバンコクの冠水がひどくなっている状況。短時間の集中豪雨が基本ですが、最近はどういうわけか長く降りがち。タイはバンコクを中心にだいぶ排水能力が上がり、ちょっとやそっとの集中豪雨で水が溜まることはありませんでしたが、それも追いつかないほど豪雨が長くなり、冠水が頻発するようになりました。

雨季に雨は当たり前なのに対策をしない。なんでだろうと思いつつも、人は慣れてくるものです。ボクは15年以上住んでいることもあり、雨は降るもの、降ったら降ったでそのときに考える、というタイ人のような考え方に。それで先日は大失敗をしてしまいました。

ふたたび飛行機から見た集中豪雨、よく見ると右と左の2ヶ所で同時に降っています。

ある日、知人がタイへ遊びに来るということで待ち合わせ。なかなか会えないのでボクも楽しみにしていたのですが、当日は夜明け前から昼頃まで土砂降り。当然、それを窓から見ていましたし、部屋から見える大通りを観察し、どれだけ渋滞がひどいかをSNSで実況をしたりと過ごしていました。100メートル進むのに25分以上かかっていたみたいです。そこまで近隣の道路事情が悪化しているにもかかわらず、午後には晴れたので、あくまでも晴れた日の所要時間を見込んで自宅を出発。

これで遅れたならともかく、そもそも自宅の敷地から一歩も出られず、知人との食事に行けなかったのです。というのも、自宅周辺道路が見たこともないほどの冠水で、バイクタクシーも定期的に走るソンテウ(トラックを改造したバスのようなもの)も、「自宅前で停まると水が入ってくるので乗せられない」と乗車拒否。移動の足がなかったのです。

これはそのときの実際の写真です。この水が完全に引いたのは2日後でした。

歩いて行くという方法もありましたが、サンダルではなく靴だったので、脱いで裸足で行くしかありません。ボクはここに住んで10年です。この辺りが普段どれだけ汚いのか知っていますので、万が一ケガをして破傷風にでもなったら……。知人との再会より、安全を取った結果でした。あらかじめなにかしらの手段を講じていればよかったものの。ちなみに、その時点で待ち合わせ周辺は、まったく冠水も降雨もない、普通の状態だったそうです。

 

雨の日は自宅やショッピングモールで過ごすのがタイ式、だがネットが楽しめない!?

冠水すると汚水も一緒に流れ出すので汚いですね。

冠水すると汚水で地面が見えないため、「なにがあるかわからないから」と車はそろそろと走ります。そうして渋滞も悪化。情緒もなにもないので、雨が降る様子を眺めてしんみりとすることもタイではありません。だから、雨が降れば、自宅で過ごすか、外出中ならショッピングモールに入ってやり過ごすのがタイ式です。まあ、乾季は乾季で暑いので、晴れてても結局同じですけどね。

しかし、雨が降ったから自宅でのんびりしようと思ってもそうは問屋が卸しません。ここでまた別の問題が発生します。執筆時点では乾季ですので、ネットスピードを測ることができませんが、タイでは雨が降るとネットが急激に遅くなります。ときにはブラウジングもままならないほどの速度です。

2011年のタイ大洪水では対策で簡易防水堤を作る商店が続出。入りづらいですが、仕方ありません。

これは原因がまったくわかりませんが、本当なんです。仕事で日本に大容量のファイルを送信したくてもできないことがときどきありますが、原因が雨だと言っても信じてもらえません。確かに、実際に居住しているボク自身が信じられないですから。なぜデジタル信号が雨で遅くなるのか。きっとネットの線が雨の重さでひしゃげているのでしょう。そうとしか考えられません。

そう考えると、雨の日に暇を潰すにはショッピングモールの方がよさそうですね。ただ、土砂降りで濡れた場合は要注意。タイのショッピングモールは新しければ新しいほどエアコンが強いです。その状態ですと、あっという間に服が冷たくなって風邪を引きかねません。

 

時代は変わってきている? 傘を持つようになったタイ人

傘を差して商売をするタイ人女性たち。裏面を見ると日傘兼用なのがわかります。

基本的には傘を持たず、特に対策を取らなかったタイ人ですが、近年はだいぶ変わってきています。彼らもちゃんと傘を持つようになってきているのです

かつては傘そのものがあまりなかったということもあります。売っている傘は値段のわりには脆いか、デザインが変。折りたたみ傘は畳んでも大きいなど、持ち運びには不便でした。そのため、濡れたくない人は雨宿りをするか、コンビニの袋などを頭にかぶって移動するなどがありました。服は濡れるのですが、そこは気にしなかったようです。

激しい雨のあとは虹が見えることもしばしばです。

いずれにしても、以前は降ってもすぐに止むのが普通でしたので、わざわざ傘を持つ必要がなかったのかもしれません。それが今は長く降り、また経済活動も1秒を争うような働き方に変わってきています。また、高架電車や地下鉄も路線がどんどん延長されていますから、雨でも時間通りに移動できるようになったこともあるでしょう。

いろいろな事情があって、タイも変わりつつあります。それにも関わらず、ボクはいまだに傘を1本も持っていません。今バンコクで昔ながらのタイ人っぽいのはボクの方かもしれません。

 

 

編集:ネルソン水嶋

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この記事を書いた人

高田 胤臣

高田 胤臣

1977年、東京生まれ。1998年に初訪タイ、2002年からタイ在住。タイの救急救命慈善団体「華僑報徳善堂」唯一の日本人ボランティア隊員。現地採用社員としてバンコクで日系企業数社にて就業し、2011年からライターになる。単行本数冊、AmazonKindleにて電子書籍を多数発行。執筆のジャンルは子育てネタからビジネス関連まで多岐に渡る。最近は「バンコク心霊ライター」の肩書きがほしく、心霊スポットを求めタイを彷徨う。

この記事を書いた人

ずんこ

ずんこ

タイを拠点に漫画家活動中。漫画作成、漫画の描き方指導、国内外のイベントにて似顔絵描きをするなどのフットワークの軽さが人気。以前シンガポールに住んでいたこともあり、シンガポールでの活動もしばしば目立つ。日本人向けタイの情報誌「バンコクマダム」などで漫画を連載中。法人から個人まで幅広く仕事を受注してます。連絡先:zunkomanga@gmail.com Facebookはこちら

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