靴って要るの? ニュージーランド人が裸足で外を歩きたがるその理由

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ニュージーランド人にとって裸足で外を歩くのは当たり前

老若男女問わず、外出をする時には靴を履く

当たり前ですよね。裸足で歩く場所は家の中と、あとはせいぜいビーチくらい。しかし、ここニュージーランドでは違います。どこでだって裸足で歩く人が多いのです。

お店の中でも、こんな割としっかりしたシャツにズボンに、裸足。

上の写真は、とあるグッズショップにて遭遇した裸足の人。ニュージーランドは今冬なのに。

なぜ裸足で歩くのか聞いてみると、「サンダルを履いて家を出たんだけど、運転すると危ないでしょ? だから脱いで運転してきたんだけど、降りるときに履くのめんどくさくてそのまま裸足で」と話してくれました。彼にとってサンダルとは何なんだろう。

ビーチなら裸足も当たり前。

芝生の上も、日本ではギリギリ違和感はないかもしれない。

私がニュージーランドに来た当初、はじめて裸足で歩く人を見た場所はビーチ。そのため疑問にも思わなかったのですが、それからしばらく過ごすうちに、さきほどの彼のようにスーパーなどのお店に来るお客さんや、なんでもない道で犬の散歩をしている人など、ニュージーランドのいたるところで裸足で歩く人を見かけるようになり、最初は違和感がすごかったものの徐々に当たり前の光景になっていきました。

しかし、やっぱり、どう考えてもおかしな話。そもそもどうして裸足なんだ?

お土産屋さんではこんな看板が売られていた、「もし裸足じゃないなら、それは着飾りすぎだよ」。

 

NZ人の友人に聞いてみた、みんなどうして裸足なの?

そこで現地在住の友人たちに聞いてみることに。

ニュージーランド人じゃない友人もいたけど、みんなにまとめてインタビュー。

子どもの頃からずっと裸足! 体育の授業で慣れてきた

井上

いきなりだけどさ、みんな裸足で外を歩く?

オリ

もちろん、裸足で歩くよ

シェーン

ビーチは当たり前だけど、スーパーもコンビニでもね

井上

さすが、やっぱり。いつからそうするようになったか覚えてる?

メル

小さい頃だと、逆に靴を履いてた記憶があまりないなぁ。コンビニに出かけるときも、それこそ学校(NZの場合は小学校と中高一貫校に別れる形が一般的。この場合はすべての学校を指している)に行くときも、スーパーに行くときもいつだって裸足だったよ

井上

あ、逆に靴を履いていた記憶がないと(笑)! それって地元が田舎の方だったからかな?

シェーン

そうじゃないか。出身地は俺の方が田舎だと思うんだけど、地元の友達が遊びに来たときは都会のど真ん中でいっしょに半日裸足で過ごしたな

井上

それ、楽しそう! ホリーは、学校ではどうだった?

ホリー

小学校のころ、まだオークランドにいたけど、裸足で学校に行ってたよ。さすがに「授業中は靴を履け」って言われたりしたけど、体育の授業中はみんな裸足だった。学校のグラウンドは芝生だし、裸足の方が早く走れるし。ランチタイムは学校の中でも外でもみんな靴を脱いでたかな

シェーン

俺はどの授業でも、怒られずにどれだけ靴を履かないでいられるか考えていたくらいだよ

井上

そこまでして裸足になりたかったのか!(笑)

ニュージーランドの学校の多くには、グラウンドに芝生が植えられ、日本のような土や砂ではないことがほとんど。そんな環境であれば、体育の授業では裸足ということも当たり前なのかもしれません。

街の中心部のQueen Street

また、学校の外であっても、ニュージーランドの多くの歩道はとても綺麗な上に、毒性のある危険生物もいないため、裸足で歩いていても怪我をしにくいんですね。

 

他国の人の目にはどう映る? アイルランドは裸足で歩きたくても歩けない

では、他国出身の人はその習慣を見てどう思ったんだろうか? マレーシア出身、在住13年目のジョールに聞いてみよう。

ジョール

俺はマレーシアでは裸足で歩くことはなかったけど、正直ね、カッコいいって思ったよ。Kiwi boys(kiwiはニュージーランド人を示すスラング)の仲間になるには裸足になればいいのかって思って、俺も裸足でよく歩いてた

井上

そっか、小さい頃のジョールの目にはカッコいいって映ったんだ。じゃあ、マークは?

マーク

俺も良いと思うよ。だって裸足で歩くのって楽じゃん? 靴履いてるのって窮屈だし。アイルランドだと、ビール瓶の破片だらけで、裸足どころか靴で歩いてても危ないよ

ホリー

確かに、私も同じ理由でイングランドにいる時は裸足で歩けなかったかも。ツバやガムで汚いし、それこそガラスの破片とかもよくあったし。だから、イングランドで10年間過ごしたあとでNZに戻って来てからは以前と違って裸足で歩かなくなった

アイルランド出身のマークとイングランドに長くいたホリーは、「ニュージーランドの道路は綺麗だからできるけど、ほかの国ではそもそも裸足で歩ける環境ではない」とのこと。それにしても、アイルランドはビールが破片だらけってのは、ギネスビールの国らしいというか(笑)。

一方で、ジョールのように子どもの頃にその習慣を見ると、「裸足で歩けるのはカッコいい」「靴を履くのは面倒くさいから最高」だと感じることが多いようです。ただ、後日、職場のカナダ人の女性に聞くと、「最初は『靴を履くお金がないのかな』って正直思ったよ」と言っており、初めて見たときに「貧乏」とイメージしてしまう人もいるらしい。

 

裸足こそが自然体! 「むしろ靴の存在がなんなんだ」で満場一致!

井上

じゃあ、今回の核心の質問なんだけどさ、なんでニュージーランド人って裸足で歩くと思う?

 

みんな「ん〜、なんでって……」

 

ジョール

いや、そりゃ、靴履くのがめんどくさいってことじゃん(笑)? つまり、ニュージーランド人って能天気で、ダラけてて、めんどくさがり、だからでしょ?

オリ

いや、それは人種差別的な発言だぞ、ジョール!!!(笑)

シェーン

待て待て、それは確かに合ってない? 本当のことでしょ? 実際、めんどくさくて履かないってことがほとんどだし

メル

そうかもね。でもなにより、それが当たり前で普通のことだからだよね。小さい頃から裸足で、大人になっても裸足の人がどこにでもいるんだし。それに、靴を履かないメリットっていっぱいあるよ。早く走れるし、蒸れて臭くならないし、夏の暑いときにスーパーに裸足で入ったら床が冷たくて気持ち良いし(笑)

オリ

そうそう、メリットはいっぱいあるんだよ。本当に。ていうか、そもそもさ、足ってこんなにも美しくデザインされてるんだから、特別必要性のないときに、靴なんか履く必要ないんだよ。いまは社会的に、靴を履くのが当たり前みたくなってるけど、ニュージーランドではそんな感じでみんながブレインウォッシュされてないってのもあるかもな

家の中でも、もちろん裸足のオリ君

 

なぜ裸足? はナンセンス! だってそう育ったんだから!

道路が綺麗だから、裸足で遊び裸足で学校に行き、裸足で芝生のグラウンドにて体育の授業を受け、裸足でビーチに向かって、裸足のままスーパーで買い物。ニュージーランド人は裸足が当たり前すぎる環境でみんな大人になる。

それに加えてニュージーランド人の国民性は、「基本的に能天気(Laid back)な性格で、他人の見てくれを対して気にしない」といわれます。たとえば、季節に関係なく短パン半袖で歩いている人の隣に、ファーコート姿の人がいることもしょっちゅうだし、化粧をしないですっぴんで歩いている女性は日本より圧倒的に多く、オフィスで短パンの男性も当たり前。このように見た目を気にしないからこそ裸足でいられるという背景も大きいようです。

これは隣国のオーストラリアでも共通する特徴であり、「メルセデス・ベンツから降りてきた婦人が裸足だった」とか、「パーティ帰りのドレスアップした女性たちがヒールを持って裸足で歩く姿をよく見かける」など、いろんなエピソードを聞くことができました。

また、ニュージーランドの先住民族であるマオリの文化では、裸足で出かけるということは「自然と繋がる」ことを意味し、Maraeというマオリにとって神聖な場所である集会場で靴を履くということは、彼らにとって冒涜的な行為であると言われています。

マオリの集会場であるMarae/©︎Yoshi Travel

今回、話を聞いた彼らは20代ばかりだったので、一方で30〜50代の人にも聞いてみましたが、揃って「文化的に、習慣的にそれが当たり前だからじゃない?」と、いかに裸足でいることが当たり前なのかということがわかりました。その自然さはもしかしたら、先住民であるマオリの文化が形を変えて影響を与えつづけているということなのかもしれません

余談ですが、米ノースフロリダ大学の研究グループによると、「裸足で走ることで脳の働きが活発になり、ワーキングメモリ(作業記憶)が向上したとの研究結果を発表したこともある」とのことで、体にポジティヴな影響を及ぼすことがあるそうです。

日本では文化的に裸足になりにくいかもしれませんが、ニュージーランドに来た際には、他人の目を気にせずに、裸足で歩いて自然を感じてみてはいかがですか?

 

 

編集:ネルソン水嶋

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この記事を書いた人

井上 龍馬

井上 龍馬

1992年生まれ。北海道出身。NZ出身の彼女と出会って新卒捨てて追いかけてNZに移住。パン屋でマネージャー兼バリスタをしつつ、フリーで翻訳・通訳・ライターをしています。また現在は、ストリートアートを通して地域活性化や環境問題を可視化するイベントを、日本中で起こすために活動中。ブログ「1QQ2」/ Twitter

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