似ているようで違う韓国の年越しとお正月、「除夜の鐘」に「とんど焼き」も

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※本記事は特集『海外の年越し』、韓国からお送りします。

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日本と似ているようでどこか違う、韓国の年越しとお正月

お隣の国、韓国は地理的にも近く、古代からの交流も盛んな国。文化や言語も日本と似ていることが多く、しばしば親近感が湧きますが、そんなところは年末年始のイベントにも見られます。

韓国では正月には、凧あげをしたりすごろくにも似たユンノリ(윷놀이)という伝統遊びをしたりと、何かと似ています。そんな韓国の年末年始の様子をお伝えしつつ、「似てはいるけれど、微妙に違う点」にフォーカスしてみたいと思います。

 

年越しのシンボル? 2月まで鑑賞できるクリスマスツリー

韓国で年の瀬が近づいてきたと感じるのは、クリスマスツリーやイルミネーションが夜の街に灯りはじめる頃。11月半ばを過ぎると、駅前やデパートなどの大型施設に数メートルはありそうな大きなツリーが置かれます。

しかし、韓国ではクリスマスが終わっても、ツリーがその場所に居座り続けて、冬の街を照らします。新年を明けても、1月半ばを過ぎてもまだそのまま。ようやく撤去される時期は、韓国本来の年末年始のメインイベントとなる、旧正月(1月下旬~2月中旬)の連休を終えたころ。そのため、年によっては2月まで鑑賞ができるのです。

商店街の新年のあいさつの垂れ幕が、翌年までかかっている様子を見たことがあり、ほんとうに大切なこと以外は、わりと悠長なところがある気がします。

 

韓国人なら誰でも知っている「日の出の名所」

初日の出を眺めるという風習は、韓国でも同じ。韓国人なら誰でも知っている有名な日の出のスポットといえば、東海岸の都市・江陵(カンヌン、강릉)にある「正東津(チョンドンジン、정동진)」という海岸です。

この正東津は、朝鮮時代(1392~1910)の正宮、景福宮の正門である光化門の真東にあたるとされたことから、このように名付けられています。現在の測量では正確な「真東」ではないと判明していますが、朝鮮時代から長きにわたり、「日の出の名所」とされているため、象徴的な意味を持つ場所なのです。

正東津へはソウルから列車に乗ると、約6時間。12月31日の夜、ソウルの清涼里駅は、夜行列車で日の出を見に行く客でにぎわいますが、年末年始に限らずこの場所にやってくる人もいます。正東津駅が「世界一海に近い駅」としてギネスブックに登録されていることや、ドラマのロケ地になっていることも理由です。

もう一つ、奇抜なスポットがあります。そこは韓国南東部にある浦項(포항、ポハン)という港町。朝鮮半島は本来ひとつの国ですが、この浦項には、現在の韓国側の陸地で最東端にあたる「虎尾串(호미곶、ホミゴッ)」という岬があります。朝鮮時代の風水地理学者・南師古が、朝鮮半島を虎の形にたとえたとき、この場所が虎の尾の形をしていることから、名付けられました。

「朝鮮半島で最も日の出が早い場所」と謳う虎尾串ですが、約50キロ南にある蔚山・艮絶串(간절곶、カンジョルコッ)でも同じ主張をしています。実際の日の出の時刻は季節によっても異なるようです。

虎尾串には2000年のミレニアムイベントを機に作られた、海中から手を出すオブジェがあるのですが、これと向かい合う陸地側にも大きな「手」があります。これは「相生の手(共存の手)」といい、全国民が助け合い生きていこう、という意味がこめられています。指のあいだから太陽が昇る瞬間をカメラに収めようと訪れる人も多いのだとか。

韓国ではよく自然のなかに東屋(壁がなく柱だけの小屋、庭園などの休憩所)を置いたりしますが、最近では「なんでここに?」と思える場所にド派手なオブジェが建っていることがあり、そのシュールさに驚かされることがあります。

 

韓国の除夜の鐘は「108回」ではなく「33回」鳴らす

旧正月が新年のメインイベントとなる韓国で、1月1日は、ごく普通の休日扱い。2日になると、新年であることを忘れてしまうかのように、普段通りに街が動いていきます。そのため大晦日のカウントダウンもそれほどパッとしませんが、特に日本に似ている点といえば、除夜の鐘に似たイベントがあることです。

それは朝鮮時代から続くソウルのメインストリート、鍾路(종로、チョンノ)の普信閣という鐘楼で行われる鐘突きイベント。韓国のカウントダウンイベントのなかで最も注目されるものがここですが、交差点を埋め尽くすほどたくさんの人が集まります。

除夜の鐘の行事は日本統治時代に根付いたようですが、現在行われているものは、このイベントのみ。鐘を鳴らす回数は「108回」ではなく「33回」。この鐘は、朝鮮時代に都城の門の開閉時刻を知らせるために使われていたもので、開門時の回数に由来するといわれています。

 

お正月は、仏閣への初詣……ではなくご先祖様のお墓参り

韓国の年末年始のメインは旧正月です。韓国の固有語では「ソル(설)」といい、旧正月当日は「ソルラル(설날)」といいます。旧暦12月31日~1月2日は祝日扱いとなり、市場や商店は一斉にシャッターを閉めるので街は閑散とします。

私が韓国で食事付きの下宿をしていたとき、下宿先のおばさんも「旧正月は田舎に帰るから」と言い、この時ばかりは、仕方なく外に出て過ごした記憶があります。それはともかく、この旧正月には、みな一斉に故郷へと帰るのです。

旧正月は、日本のお盆にも似た旧暦8月15日の秋夕(추석、チュソク)とともに二大名節といい、ともに先祖を迎えいれ、収穫を祝う行事です。そのときに「茶礼(차례、チャレ)」という祭祀を簡素化したものを行うのですが、お膳の上にお供え物を並べ、祭祀が終わったあとにそれらを分けて食べ、その後にお墓参りをします。

韓国では儒教の考えで、遺体を壊すことを嫌い、土葬が一般的に行われてきました。そのためお墓は山の斜面で盛り土になっています。しかし、今では考え方が変わっており、80%以上の人が火葬を選んでいるようです。

土まんじゅう型のお墓の前で、清酒やお供え物をささげ、その場でひざまずいて「クンジョル(큰절)」というお辞儀をします。一見すると土下座のようにも見えますが、これは敬意をこめた最上級の礼なのです。


©snoopdrew

このクンジョルは、親戚などへの新年の挨拶、「歳拝(세배、セベ)」でも行われます。日本と同様に「お年玉」の風習がある韓国なのですが、このように正式な礼をしてからお金を受け取るという行為は、目上の人への礼儀を非常に大切にする文化なのだとも思えます。

そこで私も伝統衣装の韓服(한복、ハンボッ)を着て、クンジョルをしてみました。これは朝鮮時代の貴族階級である、両班が着ていたとされるものです。

立っている状態から、礼を終えて立ち上がるまでの一連の動きが作法となっており、男性は左手、女性は右手を上に添え、ひざまづいてお辞儀をします。この写真ではお尻が持ち上がっていますが、本来はできるだけ下げます。体が固いと意外と難しいのです!

 

韓国で「お雑煮を食べる」ことは「年をとる」こと

旧正月の韓国の家庭では、茶礼で供えた料理を食べます。また正月に食べるものといえば、トックッ(떡국)とよばれる餅スープです。日本のお雑煮は地域によっても、家庭によっても様々ですが、現代の韓国では牛肉の出汁が用いられることが一般的。とはいえ、日本ほどではないにしろ、地域や家庭でも異なり、鶏肉や海産物の出汁を用いることもあるようです。

韓国では新年を迎えるたびに年を重ねる「数え年」が今でも使われており、これを食べる習慣があることから「トックッを食べる(떡국을 먹다)」という言葉が、「1つ年を取る」という意味で使われています。しかし、この餅スープは、必ずしも正月料理というわけではなく、年中食堂で食べることができる食べものです。その点もお雑煮とは微妙に異なるところです。

 

月夜の「とんど焼き」? 旧暦1月15日は「タルチプテウギ」

旧暦1月15日は「テボルム(대보름)」と呼ばれ、小正月にあたります。この日は満月の日。「月の家」という意味の「달집(タルチプ)」という藁の家を燃やす「タルチプテウギ(달집태우기)」という儀式が行われます。藁には願い事を書いた短冊がくくりつけられていますが、この儀式によって厄払いをし、豊作をお祈りするのです。

これは「とんど焼き」「どんど焼き」とも非常に似ています。日本では主に日中に行われるのに対して、韓国では月夜に行われることが多いのです。火がつけられると、夜空に浮かぶ満月と、燃え盛るタルチプの炎が美しく感じられます。

写真はソウルの南山ゴル韓屋村という文化体験施設で行われたもの。

都会の真ん中で行われることもあり、当日はテレビ局のカメラが入り、万一に備えて消防車も待機している中で行われました。日本では正月行事が新暦に代わって久しく、陰暦の主人公ともいえる「月」の存在を忘れてしまいがちです。しかし、ソウルの満月の夜空のもとで、この行事に立ち会うと「月のロマン」を改めて感じさせてくれるのです。

 

福を受け取ってください。新年の挨拶は年末から旧正月までカバー

そして最後になりますが、韓国にも「あけましておめでとうございます」に当たる挨拶があります。それは「새해 복 많이 받으세요(セヘ ポン マニ パドゥセヨ)」という言葉。直訳すると「新年、福をたくさん受け取ってください」という意味。そのため「良いお年をお迎えください」の意味でも用いられます。クリスマスツリーが年越しのあいだ、ずっと街を飾るように、この言葉も年をまたいで使われるのです。

このように似ているようで微妙に異なる部分が多い日韓のお正月。とはいえ新年に福を呼びこむという意味では、韓国の新年の挨拶は、共通して使えるようにも思えます。そんな訳で、みなさんも福をたくさんお受け取りください! 「새해 복 많이 받으세요(セヘ ポン マニ パドゥセヨ)」。

 

 

編集:ネルソン水嶋

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この記事を書いた人

吉村 剛史

吉村 剛史

東方神起やJYJと同年代の1986年生まれ。「韓国を知りたい」という思いを日々のエネルギー源とするも、韓国のオシャレなカフェには似合わず日々苦悩。ソウルや釜山も好きだが、地方巡りをライフワークとし、20代のうちに約100市郡を踏破。SNSでは「トム・ハングル」の名で旅の情報を発信。Profile / Twitter / Facebook / Instagram / 韓旅専科

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