中国・上海でインフラ化するシェアサイクル! 通勤地獄に使えそう?

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※本記事は特集『海外の通勤』、中国・上海からお送りします。

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郊外の都市開発が止まらない! 上海の通勤ラッシュは東京以上?

上海市では地下鉄やバスを通勤に使っている人がとても多く、地下鉄の駅までは自転車・バイク・バスで行き、駅から会社までは地下鉄で行くという組み合わせもあります。まず、メインの交通手段が同じく地下鉄をふくむ電車である東京と、上海の通勤圏の広さを比べてみましょう。

こちらは東京とその近郊。かなりざっくりですが、この辺りが限界かなというエリアを丸で囲ってみました。もちろんもっと遠くから通勤している人もいるとは思いますが、東京都心部へ通勤している人の居住区はほぼこの円の中で収まるのではないでしょうか。

対して、同じ縮尺の上海。赤い円は東京、青い円は上海の中心部へ通勤する人のあらかたの居住区です。こちらもざっくりではありますが、かなり小さいんです。一番の理由としては、東京とその近郊は私鉄やJRが発達しており、特急や急行など早く目的地に着く手段があるのに対し、上海は各駅停車の地下鉄が大半であるため、物理的にも長距離移動が大変だということが挙げられます。

上海では、家賃を節約するために中心部でルームシェアをしている独身者が多くいます。それはやはり、同じ家賃でも、郊外に住んで通勤時間がかかるよりはシェアした方がいいという考えの人が多いから。「少々遠くても一人暮らしのほうが気楽でいい」という考えの人が多い、プライバシーを重視する日本人と、人との距離が近い中国人の差かもしれません。

とはいえ、人口が増え続ける上海。ここ数年は青い円の外側にもどんどんマンションが建ってきていますので、今後も通勤圏は広がって行くでしょう。

ごちゃごちゃいいましたが、小さな範囲に2000万人以上とも言われる人々がぎゅぎゅっと押し込められた上海の通勤事情はなかなか大変なのです。

 

会社まで片道1時間15分かかる、筆者の通勤を紹介

私は上海市郊外の「南翔」という街に住んでおり、1時間15分かけて通勤しています。自分で言うのもなんですが、中心地に住みがちな外国人が多い中ではかなり頑張っている方だと思います。そもそもこの界隈はファミリー向けの新しいマンションが多いので、一人暮らし自体珍しいのです。

自宅を出て最寄り駅までは「歩く」

自宅から最寄り駅までは徒歩15分。バスに乗るほどでもないし、バイクを買うほどでもない微妙な距離。

歩きながら道路に目を向けると、駅までの道のりでもっとも多い交通手段はバイクです。自前のバイクもあればバイクタクシーもあり。バイクの多くは電動で、まったく音がせず、ぼーっと歩いていると危険を感じるくらい接近してくることもありますが、このように大きな道路では歩道とバイク・自転車道が分かれているので安心です。

次いで多いのは、ここ2年ほどで爆発的に人気が出たシェアサイクル。自転車を所有するのではなく、ユーザー同士でシェアするサービスです。しかし、この界隈のベッドタウンでは争奪戦であり、出勤・退勤時間が気持ち遅めの私などは、あればラッキーくらいのレベルです。シェアサイクルについてはまた後ほど詳しく説明しますね。

駅から満員の地下鉄に乗って都心へ

地下鉄11号線の南翔駅に到着。

時刻表がない代わりに、ホームにあるこのモニターで時間を確認。バラエティやニュース番組が流れている横に何分後に電車が来るかが表示されます。余談ですが、日本人自体あまり見かけないこの街で、モニターにお笑い芸人の又吉直樹さんが突如登場した際は、我が味方得たり! と勝手に親近感を持ってしまいました。

地下鉄11号線の南の終点は上海ディズニーランドなので、時々このようなラッピング車両を見かけます。これにあたると朝からちょっとハッピーな気分。

しかし、すぐあとに、そんな気分も台無しになるようなラッシュが待ち構えています。この駅はまだ大丈夫ですが、もう少し都心寄りの駅では乗り切れない人も多数。後から後からどんどん乗ってくるため、車内は東京と変わらないほど(いや、それ以上かも)のぎゅうぎゅう詰め。

地下鉄11号線は、最近開発が目覚ましい郊外と都心を繋ぐラインであるため、特に混み具合がひどいのです。電車が遅れて先行車との間隔が空いた場合は、予定を変えていくつか駅を飛ばすことすらあります。もちろん乗車時にアナウンスはありますが、3駅飛ばしたときは驚きました。

人混みの中、のろのろと乗り換え先へ向かう

11号線から2号線に乗り換えます。乗り換え通路は写真のような人だかりで、のろのろとしか進みません。この2号線も上海市内のメインラインであるため車内の混み具合も半端なし。会社に到着するころには、すでに一仕事終えたようにぐったりしてしまいます。

ただ、上海の地下鉄に乗っていてひとつ意外だったのは、「駆け込み乗車が少ない」こと「みんなあまり無理しない」こと。本数が多いからかもしれませんが、諦めが早い。頑張ればあと1人くらい乗れそう、というときでも頑張らない。東京の満員電車に慣れている私は、ぐいっと押してでも無理に乗ってしまうのですが……。

おまけ:地下鉄に「ビジネスクラス」登場!?

ここで、中国深セン在住の友人から耳寄り情報が。

深センの地下鉄の一部には「ビジネスクラス」があるとのこと。日本の電車にも一部有料座席はありますが、地下鉄に設置されるとは不思議な感じです。ホームの自動販売機で支払いをし、指定の車両に乗り込むと、ゆったりとした時間を過ごすことができるそう。2018年2月現在、追加代金は距離に応じて20~30元(約340円~480円)。地下鉄運賃は7~10元(120円~170円)ですからなかなか高額。ガラガラだという情報もあり、時間と空間を買うと思えばありかもしれません。

中国南部・深セン地下鉄のビジネスクラス。こんな電車で通勤できたら最高です。

 

地下鉄、車、バイクに次ぐ第四の通勤手段!? シェアサイクルは「乗り捨てOK」

中国に現在の形のシェアサイクルが初めて登場したのは3年ほど前。先陣を切ったサービスは黄色い車体がかわいらしいofo(オフォ)、続いてオレンジ色を基調としたmobike(モバイク)でした。支払いは専用アプリを利用してスマホ決済、さらに指定の圏内ならどこでも乗り捨て自由のシステムは画期的で、またたく間に人気に。

上は私のスマホデスクトップ。メインの2社をダウンロードしています。ただ、ダウンロードしただけでは使えず、最初に電子マネーとの紐付けなどの登録とともに、デポジットの支払いが必要です。2018年1月現在、mobikeが299元(約5000円)でofoが199元(約3400円)。これは解約をすると戻ることになっています。

ちなみに、電子マネーの支付宝が行っている芝麻信用という、個人の信用ポイントが一定数以上であればデポジットが不要になるサービスもありますが、私は残念ながら信用が達していなかったため、大人しくデポジットを払っています。支付宝については下記リンクをご覧ください。

スマホがあれば現金不要? 中国の合理的電子マネー生活

早速アプリを立ち上げ。

こちらはmobikeのアプリです。このように、今自分がいる場所の付近のどこにシェアサイクルがあるかが表示されます。さすがに、上海中心部にはあふれてますね。下部にある黒いボタンをタップするとバーコードリーダーが立ち上がるので、自転車に付いているQRコードを読み込むと鍵が開いて乗れるという仕組み。

乗り終わったら街中の白い枠内であればどこにでも駐輪してOK! 鍵をかければアプリが停止し、自動的に利用料が引き落とされます。基本は30分で1元(約17円)と格安。最近は少々割高の電動自転車もあるそうですが、まだお目にかかったことはありません。

左:mobike 右:ofo

自転車を見つけてアプリをかざして解錠して乗って、施錠して支払い。と、一連の流れがスムーズにいくととても良いのですが、実はトラブルもあります。

1)バーコードが読み取れない

バーコードに傷がついて読み取れなくなっています。バーコードの下に数字が記載されており、それを入力する方法もありますが、この場合はその数字すらも見えません。

2)そもそも自転車が壊れている

バーコードが読み取れたと思ったらこのような表示が。

– 申し訳ありません。故障していますので、他のmobikeと換えてください -と表示されています。

都心で有り余っているところならともかく、郊外でやっと見つけた一台が壊れているともうガックリです。壊れたことに気づいた誰かがアプリ上で報告すると、このような表示が出ることになります。余談ですが「我是故障車」の直訳は「私は故障した車です」。なんだか切ない。

3)誰かが確保してしまっている

どういうことかというと、「シェア」サイクルだというのに、自前の鍵(チェーン式)を付けて自分のもののように使ってしまう人がいるんですね。郊外では争奪戦であるため、このようなことが起こります。アプリで(正規の)鍵を開けた後に、(自前の)鍵がタイヤに絡まっていることに気づいた時の怒りといったら……。こういうときは面倒でもアプリ上で報告します。そうすることによって、マナー違反者は、先に挙げた個人の「信用ポイント」が下がっていき、やがてはシェアサイクルの利用ができなくなるとのこと。

そんな「信用ポイント制」が功を奏したのか、それともたまたまなのか、ここ最近は自前の鍵がかけられている自転車を見ることは少なくなりました。

 

30分約17円で小回りが利くシェアサイクルは休日にも大活躍

と、私は通勤であまり使っていないシェアサイクルですが、休日の街歩きには効果絶大です。

緑のライン(地下鉄2号線)と紫のライン(地下鉄10号線)の間には日本人に人気のスポットが集まっています。Aは古北(グーベイ)と呼ばれる日本人が多く住むエリアの一部で、日本料理店や居酒屋などが密集。Bはフランス租界地の一部でおしゃれなカフェやレストランが集まっているエリア

私はどちらもよく訪れるのですが、地下鉄2号線と10号線の間は2~3kmと、タクシーに乗るほどでもないが、歩くのはしんどいという微妙な距離。そんな時、駅で拾って目的地まで行き、付近に駐輪できるシェアサイクルは非常にありがたい存在です。

街路樹が続くフランス租界地は、サイクリングをするにも最適です。実用的であるだけでなく、サイクリング気分を味わうにもちょうどいい休日のシェアサイクル。上海は坂道がほとんどないため、ギアがない自転車でもラクラク運転できます。

 

結局、通勤で使えるのか使えないのか?

通勤で使えるのかどうかという話。都心に住んでいる人からは、気候のいい日はシェアサイクルを使って通勤するという声もあがりましたが、私のように空車が少ない郊外のベッドタウン在住者にとっては、正直言ってまったく使えません。都心では余り、郊外では足りていない。これはシェアサイクルにおける今後の課題でしょう。

休日の夕刻。都心の、とあるショッピングモール前。ご覧の通り、シェアサイクルがたくさん余っています……。やはりバランスが難しいようです。

今回は先駆けとなった2社(mobike/ofo)を紹介しましたが、実は一昨年から昨年にかけ、多くの企業がシェアサイクルビジネスに乗り出しました。雨後の竹の子のように、緑、青、白など様々な自転車が街中にあふれたのです。しかし、ユーザーが増えないと自転車が増やせない、台数が少ないからユーザーが増えないという負の連鎖で、利用者のデポジット頼みの会社はバタバタと倒産

こちらは、経営が立ち行かなくなり社長がいなくなったと言われる「小鳴単車」の青い自転車。デポジットが返ってこないというユーザーの悲鳴がネット上にこだましました。

結局、資金力が豊富なmobileとofoだけが安定してサービスを提供できています。ただ、この2社が合併するという噂も常に出回っており、シェアサイクル界は全く先が読めない状況。個人的には、故障していない自転車の安定した供給をお願いしたい次第です。

 

 

編集:ネルソン水嶋

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この記事を書いた人

海辺 暁子

海辺 暁子

2016年より上海在住。日本にいるときから典型的なO型と言われ続けてきましたが、こちらにきてさらにO型っぷりに磨きがかかりました。色々なことが自由なので体重も順調に増してます。中国の家庭料理「宮保鶏丁」が好きすぎて、大量に作って冷蔵庫にストックするのが幸せ。

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