ドイツにだって北に行けば海がある、だけど定番ビーチリゾートは「湖」水浴

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※本記事は特集『海外のビーチリゾート』、ドイツからお送りします。

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西は北海、東にバルト海。ドイツにだって海はある!

ドイツにビーチなんて、あったっけ?」と思われたみなさま。いえいえ、無理もありません。日本で紹介されるドイツの観光写真は、山の頂にそびえ立つお城だったり、童話の世界に誘い込むような中世の街だったり。海辺の光景を見る機会は、ほとんどないのではないかと思います。実際のところドイツは9ヵ国と国境を接しているので、周囲はほぼ陸地ともいえます。

ですが、ドイツにも海辺はあるのです。ちょっと地図をご覧ください。ドイツ北部の一部はデンマークと国境を接していますが、それ以外は海ですね。ということは、ドイツで海を見たければ、ひたすら北上すればいいんです。

セレブ御用達の高級リゾート、ズュルト島

西側の海は北海、東側はバルト海。どちらもドイツ国内のリゾート地です。たとえば北海に浮かぶズュルト島は、セレブが過ごす高級リゾート地として知られています。白い砂浜に、プールに、エステ&スパ。夜は高級レストランで美食ディナー。日本の高級温泉旅館に宿泊する感じでしょうか。私は、かつて夏のバカンスシーズンにうっかり一人でズュルト島に出かけてしまい、仲睦まじいカップルやファミリーに圧倒されて、すごすごと帰った思い出があります。

©GNTB / Jens Wegener

自然を満喫したい人にもズュルト島はおすすめです。島の周りは、ユネスコ自然遺産に登録されているワッデン海。6時間ごとに繰り返される潮の満ち引きにより、同じ場所がそのときどきで海に浜辺にと姿を変え、引き潮時には広大な干潟のはるか彼方まで歩いていくこともできます。希少な動植物がここに生息しているのも、こうした環境があるからです。

引き潮時に現れたワッデン海の干潟。沖まで歩いていける

ビーチに打ち寄せられた貝殻

ワッデン海はビーチが広い。浜辺から波打ち際まで徒歩15分ぐらいかかる

バルト海を代表するリゾート、ウーゼドム島

一方、バルト海の代表的なリゾート地といえば、ウーゼドム島。こちらは白い砂浜に、沖まで続くいくつもの長い桟橋が代表的な風景です。海岸通りに立ち並ぶ、クラシックで瀟洒(しょうしゃ)な白いホテルの数々が、ここが歴史あるリゾート地だということを物語っています。ウーゼドム島は半島で、東側に行くとポーランド領というのも面白い点。島内を走る列車で国境を超えると、途端に雰囲気が変わります。

ウーゼドム島の沖まで続く桟橋

ウーゼドム島の桟橋の上。沖までずっと海上を歩いている気分

夜はオレンジ色にライトアップされる

朝焼けも美しいウーゼドム島

 

海水浴とは箱型ベンチで過ごすこと?

ビーチですることといえば、当たり前ですが海でプカプカ……といいたいところですが、これが案外そうでもないんです。

ズュルト島の位置は北緯54度、ウーゼドム島は北緯53度。ちなみに日本の最北端は北緯45度で、その先の北緯54度といえばオホーツク海です。オホーツクで海水浴。想像してみてください。夏でも凍えそうじゃないですか?

同じことがドイツの海でもいえます。日差しはきつくても、海水に足を入れたとたんにあまりの冷たさに震え上がったことがたびたび。私は肩まで浸かる勇気はありません。西洋人たちは身体の造りが違うのでしょうか、悠然と泳いでいる人も見かけますが、私は足でギブアップすることが多いです。

バルト海のビーチ。水に入るのは子どもたち

ワッデン海にて。足でギブアップ。もっとも、秋なのでシーズンオフでしたが

では、ビーチに寝転ぶのかといえば、それもまた微妙なところ。北ドイツの海辺は風が強いことで有名です。そのために「シュトラントコルプ」という、ビーチ用チェアが発明されました。籐で編んだ屋根付きのベンチは、北ドイツビーチリゾートのシンボル。シュトラントコルプは、ドイツの籐かご職人が顧客の依頼を受けて、1882年に発明したのが始まりだそうです。バルト海と北海では屋根の後方部分に違いがあり、よく見るとバルト海側は後ろのカーブが丸く緩やか、北海側のものは角ばっています。

「海辺にいるのに、箱の中にいて意味あるの?」なんて言わないでください。ここで強風や強い日差しを避けながら、本を読んだり波の音を聞いたりするのも、エレガントなものですよ。

北海側のシュトラントコルプ

バルト海側のシュトラントコルプ

そういえば以前、北海道出身者から「北海道で海水浴といえば、ビーチでスイカ割りをすることなんですよ」と聞きました。やっぱり北国の海は泳ぐのではなく、そこで過ごすことに意味があるのでしょうね。

 

ビーチは海だけじゃない。淡水で身体が浮かない湖水浴

北上すれば海があるとはいえ「今日はちょっとビーチ気分だな」という日に、全国からわざわざ北を目指して何時間も移動するなんて、ありえません。ではどうするか?

答えは湖です。湖は各地にあるので、そこで湖水浴をしています。むしろ海水浴よりも、手軽な湖水浴のほうがドイツでは主流といっていいかもしれません。湖水浴では対岸の森が見えたり、すぐそばでカモやアヒルが一緒に泳いでいたりもします。

ベルリン・ミュッゲル湖のビーチ、湖水浴客で賑わう

湖畔にはビーチバレーコーナーもあります

さらに、湖水浴と海水浴では決定的な違いがあります。そう、水質です。湖といえば、淡水。海水と違って塩分が少ないので、そのままでは身体が浮きません。あがいていると、どんどん沈んでいってしまいます。しかし、なぜか西洋人たちは浮いているんですね。立ち泳ぎなのでしょうか、バシャバシャと派手に泳ぐことはなく、1ヵ所にずっと浮いているのです。やはり身体の構造、はっきりいえば体脂肪率が違うのではないかと勝手に推測しています(真偽の程はわかりません)が、単純に慣れの問題なのでしょうね。

私は立ち泳ぎなどできないので、浮き輪をつけていたら隣で泳いでいた子どもたちから嘲笑されました。「しょうがないじゃない、外国人は湖水浴に慣れていないのよ」……とは言えませんでした。

 

理想は静かなビーチ? 日本のような海の家はない

日本の大きな海水浴場には、海の家が並んでいて便利ですよね。着替えにシャワー、お腹が空いたらラーメン、カレーに、かき氷。いかにも海の家らしい単純な味が、かえってよかったりするものです。そんな日本的な海の家は、ドイツでは期待できません。たまに浜辺にシャワーが設えてあったり、公共の素っ気ない脱衣所もありますが、日本のような商業的で便利なものではないのです。

「日本の海の家がドイツにもあったら、便利じゃない?」とドイツ人に聞いてみたところ、「リゾートでは静かにくつろぎたいから、そんな賑やかな施設はほしくない」との返事。そうでした、ドイツ人はアジア的な賑々しさはリゾートに求めていないのです。雑誌などで紹介されるビーチリゾートの景色といえば、誰も歩いていない真っ白な砂浜。自然の中でゆったりくつろぐ。それが理想なのでしょうね。

湖を眺めながらゆったりとした時間を過ごす

しかし、湖水浴なら海の家がなくてもノープロブレム。淡水だから、水から上がってもべたつかないのです。日差しも強いので、濡れた水着もすぐに乾いてしまいます。行きは服の下に水着を着けていき、帰りは水着が乾いたらパンパンと砂を落として上から服を着るだけ。非常に簡単です。

湖水浴・海水浴ともに、もしも周囲を見渡して全裸の人ばかりがいるようなら、そこはFKKビーチです。全裸でいることが決まりですので、それが嫌な方は一般のビーチへ行きましょう。

https://traveloco.jp/kaigaizine/fkk-germany

今これを書いている私の願い、それは今年の夏がビーチに行けるほど暑くなってほしいこと! 北国ドイツでは、まずはそこからです。カモーン夏!

 

 

編集:ネルソン水嶋

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この記事を書いた人

久保田 由希

久保田 由希

東京都出身。ただ単に住んでみたいと2002年にドイツ・ベルリンにやって来て、あまりの住み心地のよさにそのまま在住。「しあわせの形は人それぞれ=しあわせ自分軸」をキーワードに、自分にとってのしあわせを追求しているところ。散歩をしながらスナップ写真を撮ることと、ビールが大好き。著書に『ベルリンの大人の部屋』(辰巳出版)、『歩いてまわる小さなベルリン』(大和書房)、『きらめくドイツ クリスマスマーケットの旅』(マイナビ出版)ほか多数。HPTwitterFacebookInstagram

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